『アルツハイマー病』と闘う食材

食事

前回は、「脳血管障害の改善が期待できる食材」をお話させていただきました。

今回は『アルツハイマー病』に関してみていこうと思います。

【アルツハイマー病の改善が期待できる食材】

≪「アルツハイマー病」とは≫

認知症の多くは脳血管性とアルツハイマー型に分けられ、日本では現在、それらはほぼ同数程度と考えられます。

アルツハイマー型認知症は生理的な老化によるものより早く、多くの神経細胞が消失してしまう病気で、知的能力が全体的に低下します。

最初に目立つのが物忘れですが、通常の健忘症と異なるのは、本人が忘れたという自覚がないことです。

記憶障害に続いて、見当識障害(時間や場所の感覚、自分や人がわからなくなる)、思考・判断力の低下、さらに言語障害、失行(今までできていた行為ができなくなる)・感覚(味覚・嗅覚・痛覚などの知覚)障害と進行します。

アルツハイマー型認知症では脳内でさまざまな変化が起こり、脳の神経細胞が急激に減ってしまい、脳全体が病的に萎縮して著しい知能低下や人格の崩壊が現れます。

ゆっくりと発症し、徐々に悪化するのが特徴です。

直接の原因ははっきりしませんが、環境や遺伝、加齢などの複合的な原因が考えられます。

また、活性酸素の害が影響を及ぼしているとも考えられています。

近年の研究では、アセチルコリンという神経伝達物質の著しい減少がみられ、この物質の基質(ホスファチジルコリンなど)を補充すると進行を遅らせることができると報告されています。

アルツハイマー病の300名の患者を対象とした研究では、高コレステロールや高血圧などの血管危険因子に対する治療は、アルツハイマー病の進行を遅らせる効果はあるが、進行を食い止める効果はないことがわかったとのこと。

つまりは、予防が非常に大切であるということがわかります。

血中コレステロール値が高すぎる場合は、心臓病の最大の危険因子となるだけでなく、アルツハイマー病の危険因子になることは、明白な事実として認識されています。

実際に、死体解剖の結果からも、アルツハイマー病患者の脳は、ふつうの人の脳に比べてコレステロール蓄積が非常に多いことがわかっています。

≪食事の基本≫

アルツハイマー型認知症の場合、食事で脳の変性を食い止めることはできませんが、脳細胞を活性化させることはでき、症状の緩和や予防につながります。

DHAは脳の発育や機能維持に欠かせない成分で、アルツハイマー型認知症の改善にも役立つといわれています。

またDHA同様、魚に多いビタミンDも予防や進行を防ぐ作用が期待できる成分です。

サバやブリ、サンマ、ハマチ、キンキ、マダイ、マイワシなどの魚類に多いDHAやEPAは中性脂肪を減らして血行を良くする働きがあり、脳梗塞を防いだり、脳細胞を活性化させ、認知症の発症や進行を防いでくれる優秀な食材です。

もちろん、魚はタンパク質も豊富ですよ。

ビタミンEやC、ポリフェノール(バナナ、ブドウ、リンゴ、春菊、レンコン、タマネギ、シシトウ、サツマイモ、ブロッコリー、なす、大豆、納豆、そばなどに多い)にも、老化や動脈硬化の元凶となる活性酸素の害を抑制する作用があります。

大豆や大豆加工品、ササゲ、えんどう豆、卵、豚、牛肉(特にレバー)、ピーナツ、サツマイモなどに含まれる、神経伝達物質の原料となるレシチンやコリンを摂取するのもよいです。

ビタミンB6(魚に多い)・B12(貝類、牛や鶏のレバーに多い)や葉酸などのビタミンB群は脳や神経の働きに関わり、特に認知症の人はビタミンB12と葉酸が不足する傾向があります。

ビタミンB群はそれぞれ連携して働くので、まんべんなく毎日摂るようにしましょう。

以前に心臓疾患に関して書かせていただきましたが、是非ともそちらも参考にしていただきたいです。

なぜなら、脳の動脈がアテローム動脈硬化性プラークによって詰まってしまうことが、アルツハイマー病の発病を引き起こす重大な要因と考えられているからですね。

心臓に効果があるものは、脳にも効果があると考えてよいようです。

やはり、心臓疾患のところと一緒になりますが、肉の摂取過多は認知機能に影響してくるようです。

実際に、肉を食べなくなってからの期間が長い人ほど、認知症のリスクは下がることがわかっています。

すこし遺伝子の話を。

アポEという遺伝子があるのですが、この遺伝子は、脳内でコレステロールの運び手となるタンパク質をつくる働きがあります。

この遺伝子の変異であるE4変異は、脳細胞のなかでコレステロールの異常蓄積につながりやすく、それがアルツハイマー病を引き起こす可能性があるのですが、あらゆる研究において、食生活がもたらす力は、遺伝子の力に勝ることが明らかになっています。

アルツハイマー病になりやすい遺伝子を持っていても、食生活によってそのリスクを下げることができるわけですね。

[植物性食品でアルツハイマー病を予防しよう]

アルツハイマー病の予防ガイドラインでは、植物性食品中心の食生活を推奨しています。

野菜、果物、豆類、ナッツ類をたくさん食べ、肉や乳製品をあまり摂らない「地中海ダイエット」は、認知低下の進行速度を遅らせ、アルツハイマー病のリスクを低減させることがわかっています。

このダイエットは野菜の摂取量が多く、不飽和脂肪よりも飽和脂肪のほうが少ないことが重要な特徴となります。

「地中海式ダイエット」をやらなくてはいけないというよりは、ポイントを押さえた食生活を取り入れることを念頭に置いてくださいね。

実際に、飽和脂肪の摂取量がもっとも多かった女性たちは、長いあいだに認知力低下のリスクが60-70%も増加することがわかりました。

ベリー類や緑黄色野菜は、抗酸化作用のある特別な色素を含んでいることから、野菜や果物のなかでもとくに脳に良い食べ物といえます。

ハーバード大学の研究によると、週にブルーベリーを1回といちごを2回食べた人たちは、ベリー類を食べなかった人たちに比べて、認知機能の低下が2年半も遅かったことがわかったとのこと。

ベリー類に含まれるアルツハイマー病の進行を遅らせる効果をもたらす有効成分は、ポリフェノールと呼ばれる強力な抗酸化物質になります。

そんなポリフェノールには抗酸化活性だけでなく、神経細胞を保護する作用もあることが試験管内実験によって明らかになっています。

僕自身も、毎日冷凍のミックスベリーを食べています。

甘くて美味しいので、ご褒美感覚で食べられて健康になれるので最高ですよね。

[AGEを減らそう]

以前にも書かせていただいた「AGE」。またまた登場です。

AGEはタンパク質の余分な架橋を増加させ、細胞組織の硬化、酸化ストレス、炎症などを引き起こすことによって、老化を加速させます。

もちろん脳にも影響があり、加齢にともなう脳の萎縮を加速化したり、サーチュインによる防御が抑制されたりしてしまいます。

AGEに関しては、全般的に言って、肉、チーズ、加工度の高い食品は、AGEの含有量がきわめて高く、穀物、豆類、パン、野菜、果物、牛乳は、AGEの含有量がきわめて少ないです。

AGEを少なくするために重要なのは、「調理法」「素材」

もし肉を調理するなら、蒸す、煮込むなどの湿式調理法がよいです。

その方がAGEの産生を抑えることができます。

肉の摂取量を少し減らすだけでも、毎日のAGE摂取量は実際に半減することがわかっていますので、調整してみてくださいね。

≪効果が期待できる野菜類≫

[タンパク質が多いもの]

細胞の主成分で、脳血管を丈夫にしたり、脳の働きを活性化します。

「畑の肉」といわれる大豆や大豆加工品(特に凍り豆腐、きな粉、納豆)がオススメです。

[ビタミンCの多いもの]

脳血管障害の原因となる高血圧を改善したり、動脈硬化を予防するだけでなく、抗酸化作用により脳の老化を防ぎます。

ピーマン(特に赤・黄ピーマン)、芽キャベツ、ほうれん草、ブロッコリー、京菜、カブの葉、カリフラワー、ニガウリ、サヤエンドウなどに多く含まれます。

一般にビタミンCは調理によって失われやすいが、ピーマンやジャガイモは加熱による損失が少なく、ピーマンは3個、ジャガイモは2個で、一日に必要なビタミンCが摂れる優秀な食材です。

[ビタミンEの多いもの]

過酸化脂質の生成を抑制し、脳血管性認知症の原因となる動脈硬化を防ぎます。

強力な抗酸化作用によって活性酸素から脳細胞を守り、中程度のアルツハイマー型認知症の進行を遅らせる効果が確認されています。

カボチャ、モロヘイヤ、赤ピーマン、ブロッコリー、ニラ、ほうれん草、大豆などに多く含まれています。

[葉酸の多いもの]

脳の神経を正常に保って活性化するビタミンB12の吸収をよくするとともに、連携して働きます。

ほうれん草、春菊、京菜、モロヘイヤ、芽キャベツ、ブロッコリー、アサツキ、アスパラガスなどの緑黄色野菜や、枝豆などの豆類に含まれています。

[その他]

アルツハイマー病の治療に役立つものとして、サフランがあげられます。

ですので、サフランを使って炊くパエリアを定期的に作れば、役に立つ可能性があります。

≪効果的な食べ方≫

ビタミンCは摂取後2-3時間で排泄されてしまうので、毎食きちんと摂るようにしましょう。

失われやすいビタミンなので、水洗いは手早く、茹でたらさっと水で冷ます、長く水につけないなどの工夫をするとよいです。

鮮度のよいものを選び、なるべく早く食べることも大切です。

ビタミンCはビタミンEの抗酸化作用を高める働きがあるので、一緒に摂るとより効果的です。

葉酸は加熱で失われやすいので生野菜として摂るのが望ましく、ビタミンB1(豆類など)は葉酸の吸収を増し、ビタミンCは葉酸代謝を盛んにするので、3つを一緒に摂るとより効果的です。

≪オススメ食材≫

ここまで、さまざまな食材が出てきて混乱してしまうかと思いますので、あいうえお順でよりオススメの食材を羅列しておきますので、参考までに!

・枝豆

・大豆

・ブロッコリー

・ほうれん草

・モロヘイヤ

≪ヘルスメガネマン的オススメ食材≫

ここで、僕がこれまでの内容から独断と偏見で、オススメの食材を厳選してみましたので、気が向いた方がいましたら、参考にしてみてください。

第1位:ほうれん草、ブロッコリー、豆類

第2位:EPA/DHAを多く含む魚

第3位:ベリー類

ここで、僕もよく食べている1品を紹介します。

「サバと野菜のカレー風味パスタ」です。

ブロッコリーとほうれん草を茹でます。

パスタも茹でます。

茹でたブロッコリーとほうれん草にサバの水煮缶のサバを加え、塩コショウします。

パスタと混ぜます。

最後にカレーパウダーをまぶして完成です。

デザートにベリーを食べればより効果的ですね。

興味のある方は是非御堪能あれ。

【まとめ】

・アルツハイマー型認知症の場合、食事で脳の変性を食い止めることはできないが、脳細胞を活性化させることはでき、症状の緩和や予防につながる

・魚類に多いDHAやEPAは中性脂肪を減らして血行を良くする働きがあり、脳梗塞を防いだり、脳細胞を活性化させ、認知症の発症や進行を防いでくれる優秀な食材

・ビタミンEやC、ポリフェノールにも、老化や動脈硬化の元凶となる活性酸素の害を抑制する作用がある

・神経伝達物質の原料となるレシチンやコリンを摂取するのもよい

・ビタミンB6・B12や葉酸などのビタミンB群は脳や神経の働きに関わり、特に認知症の人はビタミンB12と葉酸が不足する傾向がある

・肉の摂取過多は認知機能に影響してくる

;肉を食べなくなってからの期間が長い人ほど、認知症のリスクは下がる

・食生活がもたらす力は、遺伝子の力に勝る

・アルツハイマー病の予防ガイドラインでは、植物性食品中心の食生活を推奨

;野菜の摂取量が多く、不飽和脂肪よりも飽和脂肪のほうが少ないことが重要な特徴

・ベリー類や緑黄色野菜は、抗酸化作用のある色素を含んでおり、野菜や果物のなかでもとくに脳に良い食べ物

 ;ポリフェノールには抗酸化活性だけでなく、神経細胞を保護する作用もあることが試験管内実験によって明らかになっている

・AGEは脳にも影響があり、加齢にともなう脳の萎縮を加速化したり、サーチュインによる防御が抑制されたりしてしまう

・AGEを少なくするために重要なのは、「調理法」+「素材」

・ビタミンCはビタミンEの抗酸化作用を高める働きがあり、一緒に摂るとより効果的

・ビタミンCは葉酸代謝を盛んにするので、3つを一緒に摂るとより効果的

【クイズ】

Q1:食べ過ぎが認知機能に影響を及ぼし得る食材としてもっとも適しているものはどれか。

 ①果物 ②肉 ③野菜

Q2:病気を発症する遺伝子を持って生まれたら、その病気に必ずかかる。〇か×か。

Q3:AGE産生を少なくするために避けるべき調理法として正しいものはどれか。

 ①低温調理 ②中温調理 ③高温調理

回答

Q1の正解:②

 肉の摂取過多は認知機能に影響してしまいます

実際に、肉を食べなくなってからの期間が長い人ほど、認知症のリスクは下がることがわかっています

Q2の正解:×

 もちろん持っていない人に比べれば、その病気を発症する確率は高いですが、遺伝子のスイッチをONにしなければ発病しないとも考えられます

 そのスイッチのON、OFFに関与し得るのが食生活です

 実際に、アルツハイマー病も食の力が遺伝子の力に勝ることの報告はあがっています

Q3の正解:③

 高温調理は避けましょう

 AGE産生に関しては「素材」も大事になってきますので、適切な素材で料理を行うようにしましょう

今回は、『アルツハイマー病の改善が期待できる食材』に関して簡単にまとめてみました。

次回は、『ウイルス性肝炎』に対する食事法を簡単にまとめていこうかと思います。

『健康情報を手に入れて、今日も健やかに楽しく過ごしていきましょ~。ではまた。』

【参考文献】

『食べる投資 ハーバードが教える世界最高の食事術』満尾 正著

『食欲人』デイヴィッド・ローベンハイマー著

     スティーヴン・J・シンプソン著

『食事のせいで、死なないために』マイケル・グレガー/ジーン・ストーン著

『人生が変わる 神レシピ』メンタリストDaiGo/つっしー著

『一生リバウンドしないパレオダイエットの教科書』鈴木 祐著

『EAT-最高の脳と身体をつくる食事の技術』ショーン・スティーブンソン著

『死ぬまで若々しく健康に生きる老けない食事』スティーブン・R・ガンドリー著

『世界のエグゼクティブを変えた超一流の食事術』アイザック・H・ジョーンズ著

『細胞が生き返る 奇跡の「脂」食革命』ジョセフ・マーコーラ著

『DNA再起動 人生を変える最高の食事法』シャロン・モアレム著

『この病気にはこの野菜』斎藤 嘉美監修

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