前回は、「腎炎の改善が期待できる食材」をお話させていただきました。
今回は『尿路結石』に関してみていこうと思います。
【尿路結石の改善が期待できる食材】
≪「尿路結石」とは≫
尿中のリン酸カルシウム塩、シュウ酸カルシウム塩、尿酸塩などの濃度が高くなり、これらが結晶となって結石を作ります。
約8割はカルシウムを成分としています。
結石が腎臓にある場合を腎結石、尿管に下がってきたものを尿管結石といいます。
共に男性の発病率が女性の2-3倍に上り、働き盛りの30-50歳代に多くみられます。
原因ははっきりしていないものの、遺伝に伴う体質や肉食中心の欧米型の食生活が関係していると思われます。
主として、尿中のカルシウム過剰により結石ができやすくなります。
発汗が多く、水分摂取の少ない人はリスクが大きいといえます。
≪腎疾患に関して≫
上記のような疾患などによって、腎臓が正常に機能しなくなると、代謝老廃物が血液中に蓄積し、虚弱、息切れ、錯乱、心拍リズムの異常などの症状につながってしまいます。
毒素や感染症や尿路閉塞などによって、突然、腎不全が起こる場合もありますが、ほとんどの腎臓病は、長いあいだに腎機能が徐々に失われるのが特徴です。
腎臓病を有する人の死因の中でも心血管疾患が断トツに多かったとの研究結果があります。
なぜなら、正常な心機能を維持するには、腎臓の働きがきわめて重要だからですね。
実際に、45歳未満で腎不全のある人たちは、腎機能が正常な人たちに比べて、心臓病で死亡するリスクが100倍も高くなってしまうとの研究結果もあるくらいです。
こんな恐ろしい腎臓病も食生活を見直すことで改善を期待することができます。
以前にもお話したとおり、未加工の菜食中心の食事は心臓によいだけでなく、加えて腎臓病の予防と治療にも、もっとも効果の高い方法なのです。
≪食事の基本≫
尿管の小結石の多くは尿とともに自然に排出されるので、その作用を促すためにも、水やお茶、利尿効果のあるカリウムや水分の多い食物をたくさん摂るようにします。
果物や野菜を多く摂るほど、結石のリスクは下がります。
カルシウムや尿酸の尿中への排出濃度が一時的に高まらないように、一日を通して平均的に多くの水分(1日に最低10杯の水分)をとり、低濃度で尿が排泄できるようにすることが大切になります。
肉や魚介類、鶏卵、牛乳などの動物性タンパク質を多量摂取すると、結石形成促進物質であるカルシウム、シュウ酸、尿酸の尿中排泄を増加させるとともに、結石形成阻止物質のクエン酸の尿中排泄を減少させてしまいます。
砂糖や塩分も同様の変化をもたらします。
ですので、これらの食品を控えめにし、バランスのとれた食生活にすることが症状の改善につながります。
簡単にまとめると、果物と野菜の摂取量を増やし、動物性タンパク質と塩分を控え、1日に最低10杯の水分を摂ることで、尿酸結石は完全に溶かすことが可能となります。
保存的療法(手術を受けた患者さんに大切なこと)として縄跳びなどの適度な運動や逆立ちをすることがすすめられています。
予防や再発防止策として考えられることは以下の通りとなります。
➀動物性タンパク質を控える
➁水分を充分にとる
➂就寝直前に食事をしない
➃マグネシウムの多い食物をとる
➄塩分やビタミンCを過剰摂取しない
➅肥満を防止する
➀は前述のような理由で、結石の発生する危険性が高まります。
➁は1日2L程度の尿量になるように、平均的に水分をとります。
心臓や肝臓の悪い人、緑内障の人は、あまり水を飲みすぎると良くないので注意が必要です。
➂腎臓の働きが正常な場合、就寝中の尿量は減少して濃縮された尿ができます。
一方、食事で摂取したカルシウムやシュウ酸の尿中への排出は食後2-3時間でピークに達します。
就寝前に食事を摂ると、濃縮される尿の生成とカルシウムやシュウ酸の尿中への排出の時間が重なり、結石ができやすくなってしまいます。
➃は、マグネシウムの不足がカルシウムの働きに悪影響を及ぼすからです。
尿中にカルシウムが増えると結石ができやすくなりますが、マグネシウムにはカルシウムの沈着を防ぐ作用もあります。
➄の理由は、塩分の過剰摂取は尿中カルシウムの増加につながり、ビタミンCは体内で代謝されてシュウ酸を作るからです。
紅茶にはシュウ酸が多く含まれているので、再発しやすい人は避けた方がよいです。
ほうれん草にもシュウ酸が多いですが、生で1kg以上食べ続けない限り影響は出ないといわれています。
ビールなどのアルコール類の飲みすぎも結石の危険因子にあげられています。
特に既往のある方は控えめにする必要があります。
暴飲した場合は就寝前に水分をできるだけ多くとるようにしましょう。
➅の理由は、男性結石患者は肥満が多く、肥満者には高尿酸尿症や高シュウ酸尿症が多いことから、肥満防止が結石発生予防に重要な役割を果たします。
[食生活を見直そう]
菜食中心の食生活によって尿をアルカリ化することは、腎臓結石の予防や治療にも役立ちます。
プラスして、肉や魚を食べる量を減らせば、腎臓結石のリスクを大幅に下げることもできます。
実際に、オックスフォード大学による研究で、肉や魚をいっさい食べなかった参加者たちは、腎臓結石で入院するリスクが著しく低かったが、肉や魚を食べる人たちは、その量が多いほどリスクが高くなることが明らかになっております。
またある研究によって、野菜をたくさん摂取しても、結石のリスクは高くならないことがわかっただけでなく、果物や野菜を多く摂るほど、結石のリスクは下がることが明らかになりました。
このように、動物性食品の摂取を減らすとともに、植物性食品の摂取を増やせば、さらなる効果が期待できるわけですね。
簡単にまとめますと、果物と野菜の摂取量を増やし、動物性タンパク質と塩分を控え、1日に約2Lの水分を摂ることで、尿酸結石は完全に溶かすことが可能だということです。
[リンの過剰摂取を防ぐ]
ここで、リンに関してみていこうと思います。
血液中のリン濃度が高くなりすぎると、腎不全、心不全、心臓発作、早期死亡などのリスクが高くなり、かつ過剰なリンは血管にダメージを与え、老化や骨量の減少を早めることがわかっています。
実際に、血液中のリン濃度の上昇は、人びとの早死にを招く独立危険因子となっているほどです。
リンの中でも最も悪い種類のリンは、食品添加物のリン酸塩になります。
植物性食品のリンが血液中に吸収されるのは50%以下、動物性食品のリンでは約75%ですが、食品添加物のリン酸はほぼ100%血液中に吸収されてしまいます。
食品添加物には要注意ですね。
菜食中心の食事に切り替えると、リンの摂取量じたいは変わらなくても、血液中のリン濃度は大幅に下がります。
なぜなら、動物性食品に含まれるリンに比べて、植物性食品に含まれるリンは、体に吸収されにくいからですね。
≪効果が期待できる野菜類≫
[マグネシウムの多いもの]
マグネシウムはカルシウム以上に不足しがちなミネラルです。
特にストレスや外食の多い人、加工食品やアルコール摂取量の多い人は、積極的に摂取すべきです。
カルシウムとマグネシウムの摂取比率は2-3対1が理想とされています。
ほうれん草、ゆで大豆、納豆や干しひじき・乾燥ワカメなどの素干しの海藻類に多く含まれています。
[カリウムを多く含むもの]
利尿作用があり、結石の自然排出を促します。
パセリ、ほうれん草・三つ葉・からし菜・小松菜・京菜・春菊などの青菜類、芽キャベツ、アシタバ、ニンニク、モロヘイヤ、ニラ、ニンジン、シシトウ、セロリ、レンコン、なす、里芋、山の芋(山芋)、サツマイモ、インゲン豆、枝豆、大豆のほか、干しシイタケを筆頭にキノコ類、昆布やひじきなどの海藻にも多く含まれています。
また、トマトはカリウムが比較的多く、水分のたっぷりなので効果的です。
[その他]
緑茶のカテキンのシュウ酸カルシウム結石抑制効果、クエン酸含有量の多いレモネードのシュウ酸カルシウム予防効果が期待されています。
≪効果的な食べ方≫
カリウムはほとんどの野菜に含まれていますが、水に溶けやすく調理による損失も大きいので、生や乾燥した状態で食べた方がよいです。
加熱した場合はカリウムが溶け出しているので、煮汁も一緒に食べるようにしましょう。
食塩の摂取量が多いと、ナトリウムと一緒にカリウムも排泄されてしまうので注意です。
緑黄色野菜は全般的にマグネシウムが豊富だが、加熱による損失が非常に大きいため、カリウムと同様に調理法の工夫が必要です。
≪オススメ食材≫
ここまで、さまざまな食材が出てきて混乱してしまうかと思いますので、あいうえお順でよりオススメの食材を羅列しておきますので、参考までに!
・ミツバ
・レンコン
≪ヘルスメガネマン的オススメ食材≫
ここで、僕がこれまでの内容から独断と偏見で、オススメの食材を厳選してみましたので、気が向いた方がいましたら、参考にしてみてください。
第1位: ひじきや昆布などの海藻類
第2位: 納豆や豆腐などの大豆加工品
第3位: 緑茶
ここで、僕もよく食べている1品を紹介します。
「わかめ納豆キムチ豆腐」です。
わかめをひと口大に切ります。
切ったわかめ、納豆、キムチを混ぜ合わせます。
豆腐の上に乗せて、刻みネギを散らしたら完成です。
興味のある方は是非御堪能あれ。
【まとめ】
・尿管の小結石の多くは尿とともに自然に排出されるので、その作用を促すためにも、水やお茶、利尿効果のあるカリウムや水分の多い食物をたくさん摂る
・カルシウムや尿酸の尿中への排出濃度が一時的に高まらないように、一日を通して平均的に多くの水分をとり、低濃度で尿が排泄できるようにすることが大切
・肉や魚介類、鶏卵、牛乳などの動物性タンパク質や砂糖、塩分などの食品を控えめにし、バランスのとれた食生活にすることが症状の改善につながる
・予防や再発防止策として考えられることは以下の通り
➀動物性タンパク質を控える
➁水分を充分にとる
➂就寝直前に食事をしない
➃マグネシウムの多い食物をとる
➄塩分やビタミンCを過剰摂取しない
➅肥満を防止する
【クイズ】
Q1:尿路結石の場合は、排泄を促すためにも、しっかりと水分をとる。〇か×か。
Q2:緑茶にはレモン果汁を加えて飲むと効果的である。〇か×か。
Q3:尿路結石の予防によい習慣として正しいものはどれか。
①植物性タンパク質を控える ②水分はほどほどに摂る ③肥満防止
回答
Q1の正解:〇
その通りです
脱水にはくれぐれもならないよう注意しましょう
Q2の正解:〇
効果ありありです
緑茶のカテキンのシュウ酸カルシウム結石抑制効果、クエン酸含有量の多いレモネードのシュウ酸カルシウム予防効果が期待されています
実際に、僕も緑茶を飲むときはレモン果汁を数滴たらしてのんでいます
Q3の正解:③
男性結石患者は肥満が多く、肥満者には高尿酸尿症や高シュウ酸尿症が多いことから、肥満防止が結石発生予防に重要な役割を果たします
予防や再発防止策は以下のとおりです
➀動物性タンパク質を控える
➁水分を充分にとる
➂就寝直前に食事をしない
➃マグネシウムの多い食物をとる
➄塩分やビタミンCを過剰摂取しない
➅肥満を防止する
今回は、『尿路結石の改善が期待できる食材』に関して簡単にまとめてみました。
次回は、『風邪』に対する食事法を簡単にまとめていこうかと思います。
『健康情報を手に入れて、今日も健やかに楽しく過ごしていきましょ~。ではまた。』
【参考文献】
『食べる投資 ハーバードが教える世界最高の食事術』満尾 正著
『食欲人』デイヴィッド・ローベンハイマー著
スティーヴン・J・シンプソン著
『食事のせいで、死なないために』マイケル・グレガー/ジーン・ストーン著
『人生が変わる 神レシピ』メンタリストDaiGo/つっしー著
『一生リバウンドしないパレオダイエットの教科書』鈴木 祐著
『EAT-最高の脳と身体をつくる食事の技術』ショーン・スティーブンソン著
『死ぬまで若々しく健康に生きる老けない食事』スティーブン・R・ガンドリー著
『世界のエグゼクティブを変えた超一流の食事術』アイザック・H・ジョーンズ著
『細胞が生き返る 奇跡の「脂」食革命』ジョセフ・マーコーラ著
『DNA再起動 人生を変える最高の食事法』シャロン・モアレム著
『この病気にはこの野菜』斎藤 嘉美監修
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