前回は、「脂質異常症の改善が期待できる食材」をお話させていただきました。
今回は『心疾患』に関してみていこうと思います。
【虚血性心疾患の改善が期待できる食材】
≪「虚血性心疾患」とは≫
虚血性心疾患は、大きく「狭心症」と「心筋梗塞」に分けられます。
狭心症は心臓に栄養素と酸素を送っている冠状動脈の内腔が狭くなり、血液が充分に流れなくなる(虚血する)ために起こる病気です。
心筋梗塞は、心臓に酸素や栄養素を供給する冠状動脈が血栓などによって詰まり、血液が流れなくなります。
それにより心臓の筋肉が酸素欠乏になり、組織が死に至る、極めて死亡率の高い病気です。
心臓病死のほとんどは、心筋梗塞が原因です。
内腔が狭くなる原因は主として動脈硬化によるものですので、動脈硬化を未然に防ぐ生活習慣が大切になってきます。
緑黄色野菜を食べると心臓病のリスクが減り、寿命が延びるのは、緑黄色野菜に含まれる硝酸塩の効果になります。
[大事なのはコレステロール]
心臓発作のリスクがない状態にするには、LDLコレステロール値を70mg/dl以下にしなければならないとのこと。
この数値を目指して食事管理していきたいところですね。
[心臓病は子どもの頃から始まっている]
僕的には衝撃的だったので、ある報告をお示ししますね。
イタリアの研究で、母親のLDLコレステロール値が高い場合は、胎児の動脈に病変が見られる可能性が高いことが判明したとのこと。
つまり、アテローム性動脈硬化は、子どもの頃に栄養性疾患として発症するだけでなく、胎児の頃から始まる可能性があることがわかったわけですね。
これから生まれてくる子どもたちのために、健康的な食生活を始めるのに早すぎることはないことがこれで分かりますね。
妊娠中は色々と大変なことも多いかと思いますが、是非ともお腹の中の赤ちゃんのためにも、食事に気を遣ってみてくださいね。
≪「食事」が虚血性心疾患を引き起こす≫
われわれが毎日摂取している食事が、虚血性心疾患を引き起こしている可能性があると。
ある報告によると、心臓病のリスクの低い地域から高い地域に移住した場合、人々が新しい土地の食生活や生活習慣になじむにつれ、心臓病の罹患率は急上昇したと。
心臓病のリスクの低い代表である中国農村部とアフリカでは心臓病の罹患率がきわめて低いのですが、その理由としては、どちらも穀物や野菜など植物由来の食べ物が中心で、それによりコレステロール値がきわめて低いためだと考えられています。
実際に、中国農村部とアフリカの人々は、食物繊維が豊富で動物性脂肪がきわめて少ない食事を摂ることで、総コレステロール値が平均150mg/dl以下であったとのこと。
このように、動脈を詰まらせやすいトランス脂肪酸や、飽和脂肪酸、コレステロールの多い食べ物を控えることは、今すぐにでもできますので、是非ともこの瞬間から変えていきましょう。
私たちはいつからでも、食べ物の「選択」に少し気をつけるだけで、手遅れになる前に心臓病を予防し、進行を食い止め、改善さえできるわけですからね。
≪食事の基本≫
主因となる冠状動脈の動脈硬化を予防・改善することが非常に大切になってきます。
そのためには、脂質異常症の予防・改善と活性酸素の抑制が不可欠となってきます。
ですので、LDL(悪玉)コレステロールや塩分(1日6-8g以下)、飽和脂肪酸を控え、HDL(善玉)コレステロールの増加を図り、適切な一日の摂取カロリーを維持することを心掛けましょう。
加えて、フラボノイドなどの抗酸化物質や含硫有機化合物を含む野菜などを摂ることも大切です。
ある報告では、菜食中心の食事療法を始めてわずか数週間後には、運動をした患者たちも、運動をしなかった患者たちも、ともに狭心症発作の発生率が91%も減少したとのこと。
動脈のプラークが溶けてなくなる前に、胸痛が速やかに緩和したことは、菜食中心の食事は詰まりかけた動脈をきれいにするだけでなく、日常の機能を改善する働きがあることを示しているわけですね。
野菜様様ですね。
心筋を丈夫にするために、良質でカロリーの少ないタンパク質と、ビタミンやミネラルをバランスよく摂るようにしましょう。
不飽和脂肪酸(EPA、DHA)とビタミンDが豊富な魚類は、虚血性心疾患の予防効果が期待できる食材です。
便秘は発作を誘発させる危険性があるので、食物繊維が不足しないように注意しましょう。
過食も心臓に負担をかけるので避けましょう。
当然ですが、肥満は動脈硬化の危険因子です。
糖尿病も危険因子の1つなので、砂糖など糖分の過剰摂取も要注意です。
何度も言いますが、アテローム性動脈硬化のプラーク形成につながる最も強力な危険因子は、LDLコレステロール値の上昇です。
LDLコレステロールは、動脈にコレステロールを沈着させる働きがあるのですね。
ですので、LDLコレステロール値を下げることが必至。
そんなLDLコレステロール値を急激に下げるには、つぎの3つの摂取量を大幅に減らす必要があります。
➀加工食品や肉や乳製品に含まれるトランス脂肪酸
➁おもに動物性食品やスナック菓子に含まれる飽和脂肪酸
➂卵などの畜産食品のみに含まれる食品性コレステロール
➀や➁に関してですが、約20年前の研究結果でも明らかになっているとおり、ファストフードの食事を1回しただけで、数時間以内に動脈が硬くなり、正常な弛緩機能が半減したと。
ファストフードの脅威を思い知らされる結果ですよね。
≪効果が期待できる野菜類≫
[ビタミンA(β-カロテンなど)の多く含むもの]
心筋の働きを正常に保つビタミンAの摂取が重要です。
ビタミンAは、ビタミンC・Eとともに、コレステロールを血管に蓄積させる原因となる酸化作用を防止する働きもあります。
ビタミンA(β-カロテン)を多く含む野菜としては、シソ、モロヘイヤ、ニンジン、春菊、ほうれん草、カボチャ、小松菜、アシタバ、チンゲン菜、大根葉、ニラ、ミツバなど緑黄色野菜に多く含まれています。
他に、トマト、レタス、ピーマン、ブロッコリーなども効果的です。
[ミネラルが豊富なもの]
ビタミンと同じように心筋の機能を促進する働きがあります。
特にマグネシウムは、カルシウムの作用を調整し、心筋の働きをよくしてくれます。
海藻類やシイタケなどから摂りましょう。
生シイタケよりも干しシイタケの方が効果的です。
ほうれん草、ゆで大豆、納豆や干しひじき・乾燥わかめなどの素干しの海藻類に多く含まれています。
[食物繊維が豊富なもの]
発作の誘因となる便秘を予防するには不溶性食物繊維が、コレステロールの吸収を抑制するには水溶性食物繊維が有効です。
海藻類やキノコ類には水溶性が多く、野菜は主として不溶性食物繊維が多いのですが、どちらも比較的多く含むものはモロヘイヤ、ゴボウ、オクラ、カボチャ、豆類、ブロッコリー、春菊、ほうれん草、ニンジン、里芋などがあげられます。
[フラボノイドを多く含むもの]
フラボノイドは、アスパラガスやタマネギ、ニンニク、大根などに含まれる淡黄色や白・褐色の色素です。
強い抗酸化作用を持ち血液の循環をよくするので、虚血性心疾患の原因となる動脈硬化に有効です。
[ネギ属の野菜]
タマネギを常食する(1日1/4個以上)とコレステロール値や中性脂肪値が低下し、心筋梗塞の原因となる血栓の予防にも効果的です。
これはネギ属特有の硫黄を含む成分(含硫有機化合物)によるものになります。
タマネギほどではないですが、ネギ、ニラ、ニンニク、らっきょう、アサツキなど他のネギ属の野菜にも同様の傾向がみられます。
生のニンニクを1日1かけら(1小球根)の半分食べるだけで、血栓を溶解する働きが活発になり、心臓発作の予防にもなるといわれています。
[ピラジンを含むもの]
ピーマンの青臭さはピラジンという成分によるものです。
ピラジンは血が固まるのを防ぐので、血栓予防にはもちろん、心筋梗塞の予防・改善に効果的です。
また、血圧を低下させる働きもあるようです。
シシトウやトマト、キュウリなどにもピラジンが含まれています。
[その他]
キクラゲはキノコの中でもコレステロール低下作用が群を抜き、抗凝血作用が強い(血液をサラサラにする)ので、予防に有効な食材といえます。
納豆には血栓を溶かす作用があることが確認されています。
ただし、心筋梗塞で抗凝血薬のワーファリンを服用している方には厳禁となります。
納豆に含まれるビタミンKが、薬の効果を妨げてしまうからですね。
納豆以外では、わかめ、パセリ、モロヘイヤ、アシタバ、ほうれん草などの青菜類にビタミンKが多く含まれています。
≪効果的な食べ方≫
良質のタンパク質(マグロ、イワシ、アジ、サンマ、サバ、ブリや豆類など)をきちんと摂り、食物繊維の豊富な野菜や豆類・イモ類、食物繊維とミネラルの多い海藻類・キノコ類、そしてビタミンA・C・Eなどを含む野菜をバランスよく摂ることが決め手となります。
ポイントとしては、できるだけ多くの食品から摂った方が効果的という点です。
脂溶性ビタミンのβ-カロテン(ビタミンA)は、油と一緒に摂ると吸収率がアップします。
同じ脂溶性ビタミンで抗酸化作用のあるビタミンE(カボチャ、モロヘイヤなど)と一緒に調理すると効果が増します。
心筋梗塞の原因となる血栓ができないようにして心臓を守ってくれる働きは、生タマネギ、加熱調理したタマネギともに期待できます。
タマネギを切ったりすりおろした後、20-30分置いてから調理するようにしましょう。
切ってすぐに調理すると、血栓予防にはあまり役立たないので。
タマネギは辛みの強いストロング黄タマネギを選び、生食する場合は水にさらさないことが大事です。
水にさらすと有効成分が失われてしまうのでね。
油を使う場合は、血栓の形成を防ぐ作用のあるα-リノレン酸系やオレイン酸系の油で調理すると相乗効果を期待できます。
ドレッシングにはα-リノレン酸の多いシソ油、エゴマ油、亜麻仁油、炒め物や揚げ物には加熱しても酸化しにくいオリーブオイル、ゴマ油などで調理すると相乗効果を期待できます。
酸化しやすいものは抗酸化作用のあるビタミンCやA(β-カロテンなど)・Eを多く含む食品と一緒に摂るとよいです。
同じ不飽和脂肪酸でもリノール酸の多い食用油(紅花油、マーガリン、サラダ油など)はコレステロールの低下に役立たないばかりか、がんや動脈硬化、アレルギー性疾患の原因になりやすいといわれているので、控えた方がよいです。
血栓の不安のある人は、朝食よりも夕食で納豆を食べる方が効果的です。
血液が固まりやすく、心筋梗塞の発作が起きやすいのは夜中から朝方にかけてといわれていますので。
納豆はカロテノイドやビタミンCが含まれていないので、アサツキやネギ、ワケギを加えるとよりよいです。
≪オススメ食材≫
ここまで、さまざまな食材が出てきて混乱してしまうかと思いますので、あいうえお順でよりオススメの食材を羅列しておきますので、参考までに!
・オクラ
・カボチャ
・きゅうり
・春菊
・大豆
・タマネギ
・トマト
・ニラ
・ニンジン
・ニンニク
・ネギ
・ピーマン
・ブロッコリー
・ほうれん草
・ミツバ
・モロヘイヤ
・わかめ
≪ヘルスメガネマン的オススメ食材≫
ここで、僕がこれまでの内容から独断と偏見で、オススメの食材を厳選してみましたので、気が向いた方がいましたら、参考にしてみてください。
第1位:魚
第2位:タマネギなどのネギ属の野菜、海藻類、キノコ類(特にキクラゲがオススメ)
第3位:モロヘイヤ、ブロッコリー
ここで、僕もよく食べている1品を紹介します。
「サンマと舞茸の炊き込みご飯」です。
サンマと舞茸をご飯と一緒に炊飯し、最後に青ネギをのせて完成です。
サンマの骨は一緒に炊き込むと柔らかくなるので気にならなくなります。
骨が気になるという人は骨を取らないといけないので多少面倒になってしまいますが…。
わかめの味噌汁などもあるとより良いですね。
興味のある方は是非御堪能あれ。
【まとめ】
・主因となる冠状動脈の動脈硬化を予防・改善することが非常に大切
;脂質異常症の予防・改善と活性酸素の抑制が不可欠
・LDLコレステロール値を下げるには、つぎの3つの摂取量を大幅に減らす必要がある
➀加工食品や肉や乳製品に含まれるトランス脂肪酸
➁おもに動物性食品やスナック菓子に含まれる飽和脂肪酸
➂卵などの畜産食品のみに含まれる食品性コレステロール
・キクラゲはキノコの中でもコレステロール低下作用が群を抜き、抗凝血作用が強いので、予防に有効な食材
・良質のタンパク質をきちんと摂り、食物繊維の豊富な野菜や豆類・イモ類、食物繊維とミネラルの多い海藻類・キノコ類、そしてビタミンA・C・Eなどを含む野菜をバランスよく摂る
・血栓の不安のある人は、朝食よりも夕食で納豆を食べる方が効果的
;血液が固まりやすく、心筋梗塞の発作が起きやすいのは夜中から朝方にかけて
【クイズ】
Q1:虚血性心疾患を予防するために気をつけるべき検査項目として最も適切なのは以下のうちどれか。
①血糖値 ②血圧 ③コレステロール値
Q2:LDLコレステロール値を下げるために、摂取量を減らすべきものとして正しいのは以下のうちどれか。
①トランス脂肪酸 ②オメガ3脂肪酸 ③不飽和脂肪酸
Q3:納豆の最大限生かすための食事タイミングとして最も適しているのは以下のうちどれか。
①朝 ②昼 ③夜
回答
Q1の正解:③
動脈硬化から発生する虚血性心疾患では、上記の3つとも大事ではありますが、特に気をつけるべき値としては、コレステロール値、とりわけLDLの値ですね
Q2の正解:①
LDLコレステロール値を下げるには、つぎの3つの摂取量を減らす必要があります
➀加工食品や肉や乳製品に含まれるトランス脂肪酸
➁おもに動物性食品やスナック菓子に含まれる飽和脂肪酸
➂卵などの畜産食品のみに含まれる食品性コレステロール
Q3の正解:③
血栓の不安のある人は、朝食よりも夕食で納豆を食べる方が効果的です
血液が固まりやすく、心筋梗塞の発作が起きやすいのは夜中から朝方にかけてだからです
僕自身も以前は朝食べることが多かったのですが、夜に食べるようになりました
今回は、『心疾患の改善が期待できる食材』に関して簡単にまとめてみました。
次回は、『脳血管障害』に対する食事法を簡単にまとめていこうかと思います。
『健康情報を手に入れて、今日も健やかに楽しく過ごしていきましょ~。ではまた。』
【参考文献】
『食べる投資 ハーバードが教える世界最高の食事術』満尾 正著
『食欲人』デイヴィッド・ローベンハイマー著
スティーヴン・J・シンプソン著
『食事のせいで、死なないために』マイケル・グレガー/ジーン・ストーン著
『人生が変わる 神レシピ』メンタリストDaiGo/つっしー著
『一生リバウンドしないパレオダイエットの教科書』鈴木 祐著
『EAT-最高の脳と身体をつくる食事の技術』ショーン・スティーブンソン著
『死ぬまで若々しく健康に生きる老けない食事』スティーブン・R・ガンドリー著
『世界のエグゼクティブを変えた超一流の食事術』アイザック・H・ジョーンズ著
『細胞が生き返る 奇跡の「脂」食革命』ジョセフ・マーコーラ著
『DNA再起動 人生を変える最高の食事法』シャロン・モアレム著
『この病気にはこの野菜』斎藤 嘉美監修
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