前回は、「肝硬変の改善が期待できる食材」をお話させていただきました。
今回は『脂肪肝』に関してみていこうと思います。
【脂肪肝の改善が期待できる食材】
≪「脂肪肝」とは≫
肝細胞の内部に脂肪(特に中性脂肪)が異常に多く蓄積した状態をいいます。
あまり自覚症状はなく、ひどくなったときに食欲がなくなったり、疲労感や倦怠感を感じる程度です。
アルコール性脂肪肝と同様に、非アルコール性脂肪肝疾患も、肝臓における脂肪の蓄積によって始まりますが、まったく症状が現れないこともあります。
まれにその状態が進行して炎症を起こし、何年もかかって瘢痕となり、肝硬変を引き起こし、肝がんや肝不全となって死亡するケースもあります。
また、脂肪の割合が50%を超えるような重症の脂肪肝になると、肝機能の低下を招き、入院治療が必要になってしまいます。
肝機能を正常に保つためにも、体重をコントロールしながら蓄積した脂肪を取り除くことが大切になってきます。
主な原因としては、肥満、飲酒、糖尿病があげられます。
複合的に影響している場合もありますが、これらは食べすぎや飲みすぎなど悪い食習慣に起因したものといえ、生活習慣病ととらえられています。
まずはファストフードと距離を取ることが大事になってきます。
ファストフードがこの病気につながりやすいのは、炭酸飲料などのソフトドリンクと肉の摂取が、非アルコール性脂肪肝疾患の原因となるからです。
ある研究の結果、加糖された飲料を1日1缶飲むだけで、脂肪肝になるリスクは45%も高くなり、また1日当たりチキンナゲット14個分に相当する量の肉を食べた場合は、1日7個分に相当する量の肉を食べた場合に比べて、脂肪肝になるリスクが3倍になることがわかっています。
このように、脂肪肝の炎症を起こしている人たちは、動物性脂肪(およびコレステロール)の摂取量が多く、植物性脂肪(および食物繊維と抗酸化物質)の摂取量が少ないことが明らかになっています。
以前の肝臓のところでもお話ししましたが、脂肪肝においてもコレステロールの過剰摂取はやはり問題となります。
卵や肉や乳製品に含まれる食品性コレステロールが酸化すると、連鎖反応によって肝臓に過剰な脂肪が蓄積します。
肝臓にコレステロールがあまりにも蓄積すると、氷砂糖のように結晶化して炎症を引き起こします。
白血球はこれらのコレステロールの結晶を呑み込もうとしますが、途中で死に、炎症性化合物をまき散らすことになり、最終的に、良性の脂肪肝が深刻な肝炎に変わってしまうこともあり得るわけです。
このように、コレステロールの摂取量によって、将来、肝硬変や肝がんになる確率が大きく左右されてしまいます。
肝臓疾患の最大の原因である非アルコール性脂肪肝疾患にならないようにするには、カロリー、コレステロール、飽和脂肪、砂糖の過剰摂取を避けるのが最善の策です。
脂肪肝は単に肝臓病としてのみでとらえるのではなく、多くの生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満など)の1つの身体への現れとして解釈する必要がありますね。
≪食事の基本≫
肥満が原因の場合にはまず減量が必要になります。
摂取カロリーの制限と運動により、体重だけでなく蓄積した脂肪も減少していきます。
アルコールが原因の場合には禁酒が不可欠になります。
禁酒によって脂肪の合成が減少し、逆に蓄積した脂肪が分解され改善していきます。
糖尿病が原因の場合にも摂取カロリー制限と運動が有効です。
メニューや留意点は糖尿病の食事療法に準じます。
以下に脂肪肝の食事のポイントを具体的に記します。
➀食べすぎないで、肝臓に蓄積した脂肪の分解を促す
➁良質のタンパク質を採る
➂ビタミン、ミネラル、食物繊維をたっぷりとる
➃体内の酸化を防ぐ
➄動物性脂肪や甘いものは控える
➅禁酒を心掛ける
➀における摂取カロリーは体重によって異なりますが、成人男子で1日1500-1800キロカロリーが目安となります。
➁は肝細胞を再生するとともに、脂肪を肝臓から放出させるサポートをします。
大豆や豆腐、卵、魚、鶏のささみなどでとるとよいです。
➂は肝臓での基礎代謝を促進したり、糖質や脂質の吸収を抑制するのに有効です。
できるだけ多くの食品から摂取すると、効果がアップします。
➃抗酸化作用のあるビタミンC・E・A(β-カロテンなど)やアントシアニン(ナス、赤ジソ、紫芋、紫キャベツなど)、ゴマに含まれるゴマリグナンなどが有効です。
➄肉の脂身、バターなど動物性脂肪や揚げ物、砂糖や菓子類、果物に多い果糖は、脂肪になりやすいので注意が必要です。
➅アルコールは高カロリーなうえ、過剰なアルコールは肝臓に負担をかけ、脂肪になりやすいので、肥満や糖尿病による脂肪肝であっても禁酒した方がよいです。
肝硬変の予防には食べすぎや飲みすぎをせず、栄養バランスのよいメニューにすることが第一になります。
1日3回、規則正しく食事をとることも大切です。
また、最低週に2日は飲酒せず、「休肝日」を設けるようにしましょう。
[肝臓を守る朝食]
1日のはじめにボウル1杯のオートミールとコーヒーの朝食を摂れば、肝機能の保護に役立ちます。
オートミール
ある実験で、全粒穀物は慢性疾患を予防する効果が高いことがわかりました。
また、2014年のある調査では、全粒穀物には、非アルコール性脂肪肝疾患の患者たちの肝炎リスクを減少させる保護効果があることも確認されております。
加えて、精製された穀物の摂取はかえって病気のリスクを高めることもわかりました。
コーヒー
コーヒーの摂取は肝臓炎症の緩和と関連性があります。
アメリカの実験で、コーヒーを1日2杯以上飲む人たちは、1日1杯以下の人たちに比べて、慢性の肝臓疾患を発症するリスクが半分以下だったとのこと。
また2013年のレビューによると、コーヒーの摂取量がもっとも多い人たちは、もっとも少ない人たちに比べて、肝臓がんのリスクが半分だとわかりました。
同じく2013年に発表された研究では、コーヒーの摂取にはDNAの損傷を減らし、ウイルスに感染した細胞の除去を促進し、瘢痕の形成を遅らせる効果があることがわかりました。
すなわち、コーヒーには肝臓疾患の進行リスクを低減させる効果があることがわかりますね。
≪効果が期待できる野菜類≫
[ビタミン類の多いもの]
肝臓での基礎代謝を促進します。
ビタミンC・E・A(β-カロテンなど)には、肝機能低下の原因となる活性酸素を除去する抗酸化作用もあります。
トマト、ピーマン、カリフラワー、ブロッコリー、ほうれん草、ニンジン、カボチャ、モロヘイヤなどがオススメです。
カリフラワーは血管を丈夫にし、肝機能を保護するビタミンCが豊富で、糖質に包まれているため、茹でても50%以上摂取できます。
また、肝臓に不可欠なビタミンKも含まれています。
[ミネラル類の多いもの]
肝臓での基礎代謝を促進します。
ワカメや昆布などの海藻類やシイタケなどのキノコ類から摂取できます。
[食物繊維の多いもの]
シイタケやえのきだけなどのキノコ類、こんにゃくなどは、食物繊維が豊富かつ低エネルギーなので摂取カロリーの制限につながり、脂質や糖質を排出する作用もあります。
食物繊維は、野菜や豆類、イモ類、海藻類、キノコ類をはじめ、いろいろな食品からバランスよく摂るとよいです。
これらの食材を普段から積極的に食べれば、脂肪肝の予防になりますので、積極的に摂取していきましょう。
[大豆サポニンの多いもの]
ポリフェノールの一種です。
肥満予防や脂肪肝ほかの肝機能障害の予防・改善に有効で、大豆や大豆加工品に含まれています。
[コリンやレシチン(リン脂質)の多いもの]
コリンは肝臓の過剰な脂肪がたまるのを防ぎ、不足すると脂肪肝になります。
レシチンも肝臓への脂肪沈着を防ぐので、脂肪肝の予防になります。
ビタミンB群の仲間のコリンは体内で作られ、細胞膜を構成するレシチンの材料となり、レシチンが働くためには充分なコリンが必要となります。
コリンは大豆、エンドウ豆、ササゲ、サツマイモ、大豆加工品に、レシチンは大豆や枝豆、大豆加工品に多く含まれている
ですので、飲酒の際には枝豆がオススメになります。
[グルタチオンを含むもの]
肝臓の解毒機能を促し、過酸化脂質の生成抑制や分解に働いて肝機能を改善します。
アルコール性脂肪肝の予防に有効です。
ブロッコリー、ほうれん草、タマネギなどに含まれています。
≪効果的な食べ方≫
飽和脂肪酸を多く含む肉類は、肥満ひいては脂肪肝の原因となります。
肉類を食べるときは、ゴボウ・レンコンなどの根菜や海藻類と一緒に摂るようにしましょう。
食物繊維が脂質の吸収を抑制し、肝臓に脂肪がたまるのを防ぐので、脂肪肝の予防につながります。
魚介類や植物油に含まれる不飽和脂肪酸は、脂質の代謝を促して脂肪肝を予防しますが、酸化しやすいので、抗酸化作用のある緑黄色野菜などと一緒に摂ると、より効果的です。
ゴマに含まれるゴマリグナンは肝機能を高めるので、食卓にゴマを置いて積極的に利用するといいです。
≪オススメ食材≫
ここまで、さまざまな食材が出てきて混乱してしまうかと思いますので、あいうえお順でよりオススメの食材を羅列しておきますので、参考までに!
・枝豆
・キャベツ
・昆布
・シイタケ
・大豆
・ブロッコリー
・ほうれん草
・レンコン
・わかめ
≪ヘルスメガネマン的オススメ食材≫
ここで、僕がこれまでの内容から独断と偏見で、オススメの食材を厳選してみましたので、気が向いた方がいましたら、参考にしてみてください。
第1位:キノコ類
第2位:大豆や大豆加工品
第3位:ブロッコリー、カリフラワー
ここで、僕もよく食べている1品を紹介します。
「豆腐のキノコ和風あんかけ」です。
豆腐はキッチンペーパーに包んで水気をきっておきます。
キノコ類はお好みのものを選んでいただき、一口大にしてください。
(ちなみに僕は、しめじ、えのき、舞茸をよく使います。エリンギとかいいかもですね。)
だし汁と醤油・みりんで味付けしたものにキノコ類を入れて煮ます。
水溶き片栗粉でとろみをつけます。
豆腐に餡をかけて最後に三つ葉(お好みでネギでもいいです)をのせたら完成です。
興味のある方は是非御堪能あれ。
【まとめ】
・肥満が原因の場合にはまず減量が必要
・アルコールが原因の場合には禁酒が不可欠
・糖尿病が原因の場合にも摂取カロリー制限と運動が有効
・脂肪肝の食事のポイント
➀食べすぎないで、肝臓に蓄積した脂肪の分解を促す
➁良質のタンパク質を採る
➂ビタミン、ミネラル、食物繊維をたっぷりとる
➃体内の酸化を防ぐ
➄動物性脂肪や甘いものは控える
➅禁酒を心掛ける
・飽和脂肪酸を多く含む肉類は、肥満ひいては脂肪肝の原因となる
➝肉類を食べるときは、ゴボウ・レンコンなどの根菜や海藻類と一緒に摂る
・魚介類や植物油に含まれる不飽和脂肪酸は、脂質の代謝を促して脂肪肝を予防するが、酸化しやすいので、抗酸化作用のある緑黄色野菜などと一緒に摂るとより効果的
・ゴマに含まれるゴマリグナンは肝機能を高めるので、積極的に利用するといい
【クイズ】
Q1:アルコールが原因の脂肪肝の場合には“節酒”を心掛ける。〇か×か。
Q2:脂肪肝の食事のポイントとして誤っているものは以下のうちどれか。
①食べすぎない ②動物性脂肪を控える ③スイーツを食べる
Q3:次のうち、肝臓にマイナスな影響をもたらす「アブラ」はどれか。
①トランス脂肪酸 ②オメガ3脂肪酸 ③オメガ6脂肪酸
回答
Q1の正解:×
“節酒”ではなく“禁酒”ですね
きっぱりと止めましょう
Q2の正解:③
③が適していますね
スイーツを食べる場合には、果物などで適切な量を摂るのがいいでしょう
Q3の正解:①
①のトランス脂肪酸は、肝臓だけでなくあらゆる臓器にマイナスに働くので摂取は控えましょう
今回は、『脂肪肝の改善が期待できる食材』に関して簡単にまとめてみました。
次回からは、“腎臓”に着目してみていこうかと。
まずは『腎炎』に対する食事法を簡単にまとめていこうかと思います。
『健康情報を手に入れて、今日も健やかに楽しく過ごしていきましょ~。ではまた。』
【参考文献】
『食べる投資 ハーバードが教える世界最高の食事術』満尾 正著
『食欲人』デイヴィッド・ローベンハイマー著
スティーヴン・J・シンプソン著
『食事のせいで、死なないために』マイケル・グレガー/ジーン・ストーン著
『人生が変わる 神レシピ』メンタリストDaiGo/つっしー著
『一生リバウンドしないパレオダイエットの教科書』鈴木 祐著
『EAT-最高の脳と身体をつくる食事の技術』ショーン・スティーブンソン著
『死ぬまで若々しく健康に生きる老けない食事』スティーブン・R・ガンドリー著
『世界のエグゼクティブを変えた超一流の食事術』アイザック・H・ジョーンズ著
『細胞が生き返る 奇跡の「脂」食革命』ジョセフ・マーコーラ著
『DNA再起動 人生を変える最高の食事法』シャロン・モアレム著
『この病気にはこの野菜』斎藤 嘉美監修
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