今回は睡眠のタイプについて見ていきましょう。
≪レム睡眠とノンレム睡眠≫
眠りにはレム睡眠(脳は起きていて体が眠っている睡眠)とノンレム睡眠(脳も体も眠っている睡眠)の2種類があります。
このレム睡眠/ノンレム睡眠の両方が、体・脳・心すべての疲労回復にとって必要なんです。
夜間の睡眠にはステージがあり、レム睡眠とノンレム睡眠の移行を繰り返しながら朝を迎えています。
夜間の睡眠は、ノンレム睡眠のStageⅠからStageⅣまで順次深い睡眠となり、その後レム睡眠へ移行します。
レム睡眠は約90分ごとに出現し、ノンレム睡眠とそれに続くレム睡眠を1つの睡眠周期(sleep cycle)とよびます。
一晩の睡眠ではこの睡眠周期を4-5回繰り返すことになります。
(1サイクルが80分の人もいれば、110分の人もいます)
深いノンレム睡眠は入眠後の約2-3時間に集中して出現し、レム睡眠は朝方に向けて増加。
こんな感じで夜の睡眠は変化しているのですね。
このサイクルの連続を、なめらかなひと続きの睡眠として取ることが重要なんですね。
≪レム睡眠≫
まずはレム睡眠の働きについて見ていきましょう。
レム睡眠の段階は記憶力を高め(記憶力向上)、トラウマ的な出来事に対処する力になり(メンタル改善)、問題について新たな視点から見つめ直す助け(創造性向上)にもなるといわれています。
子どもたちが個性を伸ばし、周囲の環境を理解するうえで、レム睡眠が役立つのですね。
それぞれの機能に関して細かく見ていきましょう。
レム睡眠による記憶力向上
レム睡眠の脳では、記憶の整理や仕分け、定着などが行われています。
夢を見るのはこのレム睡眠のときで、見た夢を覚えているのは脳が活動している状態だからと考えられています。
レム睡眠によるメンタル改善
うつ病を予防する役割があるとも言われるほど、脳にとって貴重な睡眠段階。
つまり、「脳の定期的なメンテナンス時間」とも捉えられます。
レム睡眠のおかげで私たちは、自分の感情とうまく付き合い、それによって精神的なバランスを維持できているのですね。
また、レム睡眠はストレス解消にも一役買っています。
ストレスの解消効果があるのはレム睡眠のほうで、その状態にある時間を十分に確保するには、短時間の睡眠では足りないと。
なぜなら、レム睡眠の状態にある時間は、一晩の睡眠の後半になればなるほど増えるためです。
つまりは、嫌なことがあった日には、いつもより長めに寝るようにしましょう、ということですね。
できれば7-8時間ぐっすり眠りましょう。
また、人間社会で生きているとイライラすることもありますが、そこでもレム睡眠が役立ってくれると。
レム睡眠は情動的ストレスと関わりをもち、嫌な記憶を削ぎ落とし、情動反応の抑制をしてくれる役割を果たしてくれているんですね。
覚醒時に扁桃体が前頭葉の言うことを聞き入れるための前提条件が、レム睡眠時に整えられるというわけです。
レム睡眠には、感情的な記憶からドラマティックな部分を削ぎ落とし、理性的なレベルへと刈り込んでいく能力があるんですな。
レム睡眠さまさまですね。
感情をうまく扱う能力に、EQ (;Emotional Intelligence Quotient → 心の知能指数)というものがありますが、このEQの高さは、日々十分なレム睡眠をとっているかどうかで決まるみたいですな。
レム睡眠が失われると、精神を病むともいえますね。
レム睡眠による創造性向上
レム睡眠には「社会を構成する」役割と、「創造性を促進する」役割があります。
レム睡眠の間に起こる記憶の衝突から、創造性の火花が生まれるわけですね。
レム睡眠と睡眠パターン
明け方になるとレム睡眠の出現時間が長くなるのが通常の睡眠パターン。
浅くて長い明け方のレム睡眠に目覚めるのが、自然な流れになります。
レム睡眠と健康リスク
レム睡眠と健康に関して。
レム睡眠の割合が5%減少するごとに、あらゆる原因による死亡リスクが13%上昇するとの研究があります。
また、レム睡眠の割合が15%未満の人は15%以上の人と比べて、死亡リスクが高くなる可能性も示されているほど。
つまり、レム睡眠の割合が少ないほど死亡するリスクが高くなることが明らかになったということですね。
もう今すぐにでも眠りにつきたい気分ですよね。
≪ノンレム睡眠≫
続いて、ノンレム睡眠に関してです。
ノンレム睡眠の働きは以下の通りになります。
肉体のメンテナンス
ノンレム睡眠は、「肉体的疲労回復のためのメンテナンス時間」と考えられます。
大事なのは「眠り始めの3時間」。
何時に寝ても成長ホルモンは最初の3時間にもっとも出るとのこと。
この深睡眠が、傷ついた繊維の修復に必要な成長ホルモンの分泌と深く関わっています。
この眠り始めの3時間に、ノンレム睡眠の中でもとくに深い睡眠が出現することがわかっており、このときに、一日に分泌される成長ホルモンの7-8割が出るんだとか。
つまり、この段階が欠けてしまうと目覚めたときに疲労感や焦燥感が残ってしまいます。
しかし、成長ホルモンの分泌には睡眠の質が大事。
一度目を覚ましてしまうと、以後、成長ホルモンはあまり分泌されなくなってしまうと。
そこで、睡眠メンテナンスで意識したいのが、「最初のノンレム睡眠」をいかに深くするか、とうこと。
ここで深く眠れれば、その後の睡眠リズムも整うし、自律神経やホルモンの働きも良くなり、翌日のパフォーマンスも上がってきます。
修復が促進されるのも、そして脳の老廃物回収システム「グリンパティックシステム」が発動するのも、ノンレム睡眠のときなので、しっかり最初の3時間を意識した睡眠をとりたいですね。
記憶の固定
次は、記憶の固定に関して。
最初の90分間のノンレム睡眠は、睡眠全体のなかで最も深い眠りと言われています。
この深い眠りのゆっくりした脳波が、短期の記憶が保管されている場所から新しい記憶の入った荷物を受け取り、長期の記憶を保管する場所に届けていると。
睡眠は巧みな技を使って、記憶スペースの容量不足という問題を解決しているんですね。
読書家、勉強家、そのほか頭をよく使う人は、新たに得たあらゆる情報を処理できるよう、深い睡眠を多く必要とするとのことなので、受験生や資格の勉強などしている人には必須ですね。
睡眠紡錘波
レム睡眠の中でも第2ステージといわれる時期には、「睡眠紡錘波」が出る貴重な時間なんだと。
この睡眠紡錘波は、深い睡眠の間に新たに学習した事実を定着させるうえで貢献していると言われています。
運動を制御する大脳皮質の領域で生じることから、大工仕事、ギター演奏、裁縫、自転車といった特定の活動の習得に関する記憶がとくに固定化されるみたいです。
つまり、この第2ステージで睡眠紡錘波が多く発生すると、運動能力の発達が促されます。
また、睡眠紡錘波の大事な役割として、途中で覚醒することなく睡眠を維持できるように働く、というものがあります。
睡眠紡錘波の出現が少ない人は睡眠中に目が覚めやすく、睡眠の質も低くなってしまいます。
男性よりも女性のほうに睡眠紡錘波が多く現れるという特徴もあり、また、年齢でも違いがあり、高齢者はたいていの場合、若い世代よりも睡眠紡錘波が少ないと言われています。
理由として、睡眠紡錘波を発生させる能力の低下に加え、年を重ねるほど新たな刺激にさらされる機会が少なくなることも原因の一つみたいです。
【まとめ】
・睡眠には、レム睡眠とノンレム睡眠がある
・レム睡眠の働き
;「記憶力向上」「メンタル改善」「創造性向上」
・ノンレム睡眠の働き
;「肉体のメンテナンス」「記憶の固定」
・睡眠紡錘波の働き
;・深い睡眠の間に新たに学習した事実を定着させる
・途中で覚醒することなく睡眠を維持する
【クイズ】
以下の「」に入るものは何か?
Q1:睡眠は一辺倒でStageなどは存在しない。〇か×か。
Q2:以下のうち、レム睡眠の働きでないのはどれか?
①記憶力低下 ②メンタル改善 ③創造性向上
Q3:以下のうち、ノンレム睡眠の働きでないのはどれか?
①肉体のメンテナンス ②神経伝達物質の減少 ③記憶の固定
回答
Q1の正解:×
睡眠は大きく分けると、レム睡眠とノンレム睡眠に分けられる
Q2の正解:①
レム睡眠の働き;「記憶力向上」「メンタル改善」「創造性向上」
Q3の正解:②
ノンレム睡眠の働き;「肉体のメンテナンス」「記憶の固定」
今日はレム睡眠とノンレム睡眠について記述してみました。
また次回の記事でお会いしましょう。
『健康情報を手に入れて、今日も健やかに楽しく過ごしていきましょ~。ではまた。』
参考文献
『よく眠るための科学が教える10の秘密』リチャード・ワイズマン著
『スタンフォード式 最高の睡眠』西野 精治著
『賢者の睡眠 超速で脳の疲れを取る』メンタリストDaiGo著
『一流の睡眠』裴 英洙著
『睡眠こそ最強の解決策である』マシュー・ウォーカー著
『世界の最新論文と450年企業経営者による実践でついにわかった 最強の睡眠』西川 ユカコ著
『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』ショーン・スティーブンソン著
『最高の体調』鈴木 祐著
『ぐっすり眠る習慣』白濱 龍太郎著
『世界最高のスリープコーチが教える 究極の睡眠術』ニック・リトルヘイルズ著
『Sleep,Sleep,Sleep』クリスティアン・ベンディクト著 ミンナ・トゥーンベリエル著
『最高のリターンをもたらす超・睡眠術 30のアクションで眠りの質を高める』西野 精治著 木田 哲生著
『不老長寿メソッド 死ぬまで若いは武器になる』鈴木 祐著
『眠る投資 ハーバードが教える世界最高の睡眠法』田中奏多著
『熟睡者』クリスティアン・ベンディクト著 ミンナ・トゥーンベリエル著
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