今回は、体脂肪に関してみていこうと思います。
≪体脂肪を気にする現代人≫
“体脂肪”と聞いて、みなさんは何を思い出しますか?どんなものをイメージしますか?
多くの人にとっては、あまりいいイメージを持っていないのではないかと思います。
これは僕個人の意見ですが、体脂肪は肥満をイメージさせるものになっています。
みなさんはどうでしょうか。
そんないいイメージのない体脂肪ですが、身体にとっては必要なものであるため、決していらないものではないのですが、さすがに多すぎるとなかなか大変な事態を引き起こしてしまいます。
そんな体脂肪を増やす要因を見ていきましょう。
原因が分かっていれば、おのずと対策しやすくなりますからね。
体脂肪の増加を促す3つの要因
体脂肪を増やす要因としては大きくは3つあるとのことです。
これら3つが存在すると、代謝のスイッチを混乱させて、代謝にかかわる全員に仕事をさぼらせかねません。
それぞれどんなものか見ていきましょう。
[要因1:炎症]
まずは「炎症」です。
炎症はたいてい悪者とみなされますが、実は健康の維持に欠かせないものなのです。
なぜなら、炎症は、怪我や感染に対する免疫システムの反応のひとつとして不可欠な役割を担っているからです。
そんな重要な役割を持つ炎症も、程度が大きすぎれば身体に害を及ぼすようになります。
腸で炎症過多になると、マイクロバイオーム(多様な微生物が集まったコミュニティ)が大混乱を起こします。
腸を守るバリアが免疫システムの機能障害や炎症によって破壊されると、腸の病気だけでなく全身性疾患が起こりかねません。
つまり、腸で炎症が起こると身体全体に病気や異常が生じかねないということになります。
また、マイクロバイオームはさまざまな形で私たちの健康に影響を及ぼしますが、特に重要なのが短鎖脂肪酸の産生です。
短鎖脂肪酸は、炎症の軽減に関与し、内臓脂肪を軽減する手伝いまでしてくれる働き者です。
しかし、腸での炎症過多でマイクロバイオームが大混乱を起こせば、短鎖脂肪酸の産生も減少し、最終的には脂肪蓄積へと導かれてしまう事態に…。
では、肝臓という大切な臓器で炎症過多になるとどうなるのでしょうか。
肝臓は代謝にまつわる重要な仕事をいくつも担っていますが、炎症にはそのすべてを阻害できる力があるみたいです。
炎症が肝臓で引き起こされ肝機能の低下が起こると、腹回りに脂肪が増える要因となり、腹回りの脂肪が増えれば、肝機能が低下する要因となります。
肝機能が低下すれば、より脂肪が増えてしまい、もう悪循環の何物でもない状態です。
全身性の炎症全般を軽減させることがとても重要だということが分かりますよね。
[要因2:ホルモンの機能不全]
体内にはさまざまな種類のホルモンが存在しますが、脂肪の管理に関わるホルモンについてみていきましょう。
“インスリン”
まずはインスリンです。
膵臓から分泌されるホルモンの一種で、簡単に言うと、糖の代謝を調節し、血糖値を一定に保つ働きを持ちます。
インスリンにより細胞は血液中のブドウ糖を取り込み、エネルギー源として利用しますが、そこで余ったブドウ糖はグリコーゲンや中性脂肪に合成され蓄えられますが、その合成を促進するのもインスリンの働きです。
そんなインスリンがきちんと作用しない「インスリン抵抗性」が生じるいちばんの原因は、血糖値を上昇させる高血糖食品の過剰摂取と炎症と言われています。
ここで、炎症が出てくるわけですね。
インスリン抵抗性があると、筋や脂肪組織の糖取り込み能が低下し、肝臓では糖新生が抑えられなくなり、その結果、血糖値が下がりにくくなり、血糖値を正常状態に戻すためにより多くのインスリンが必要になってしまいます。
こんなインスリン抵抗性が生じれば、どんどんインスリンが分泌され、どんどん脂肪が合成されてしまいますので、みなさんの想像する通りの姿形になってしまうわけですね。
“グルカゴン”
続いてはグルカゴンです。
まずは、グルカゴンの働きからみていきましょう。
・脂肪細胞や肝臓から貯蔵された脂肪を取り出し、それを燃焼してエネルギーに変える機会をもたらす
・脂肪組織や肝臓での脂肪酸の合成(脂肪酸の誕生)を減少させる+組織内で脂肪分解を促進することで、脂肪酸が血液循環に分泌され、エネルギーへの分解が可能になる
上記のような働きを持ちますので、グルカゴンは味方につけておきたいですよね。
賢い食生活には、タンパク質と炭水化物の比率を見直してグルカゴンを味方につけることが求められるとのこと。
摂取するタンパク質を上質なものにし、食事で摂るタンパク質と炭水化物の比率を変える。
こうすることで、グルカゴンの働きの促進につながるといいます。
“脂肪の管理にかかわるその他の重要なホルモン”
最後にその他のホルモンを見ていきましょう。
その他と分類してしまっていますが、これも重要なホルモンですので。
それは、エストロゲンです。
エストロゲンの過不足は、男女を問わず代謝ネットワークの乱れの要因になりうると言われています。
エストロゲンレベルが低いと、脂肪の燃焼は減るのに食欲は増進し、お腹まわりにつく内臓脂肪がさらに増えてしまうという結果に。
これには、インスリンとの関係性が大きく関わってきます。
エストロゲンは、インスリン感受性を改善したり、インスリン分泌を高めたりするという報告があり、インスリンと密接に関係しているのですね。
つまり、食事を通じてインスリンレベルを最適に保てば、エストロゲンにもプラスの影響が及ぶというわけですね。
[要因3:食欲の調節異常]
最後は食欲の調節に関して。
僕も食べることは大好きなので、どんなに食べても太らずに健康でいられるのなら、無限に食べていたいと思ってしまいますが…。
まぁそんなうまい話はないのですがね。
まずは食欲を抑えてくれるレプチン。
レプチンは食欲を抑えるだけでなく、脂肪の代謝自体にもかかわることが示唆されているみたいです。
しかし、マイクロバイオームの炎症や異常があると、レプチン抵抗性に直結してしまうと。
マイクロバイオームの炎症を軽減し、マイクロバイオームの状態を改善すれば、必然的にレプチン抵抗性も改善します。
次に食欲をかき立てるグレリン。
血中グレリン濃度が高いと、食欲のスイッチを切る信号が視床下部にしっかりと伝わらないため、簡単にカロリーの過剰摂取を招いてしまいます。
そのため、グレリンの分泌は高めすぎないようにしないといけません。
その方法としては、一日の最初の食事でタンパク質の比率を増やすこと。
そうすると、グレリンレベルの低下を招くと言われていますので、是非一日の最初の食事ではタンパク質比率を高めた食事を摂りましょう。
最後にアディポネクチンです。
アディポネクチンは、脂肪細胞から分泌されるタンパク質です。
脂肪分解酵素を活性化する働きがあり、糖や脂肪の消費をサポートしてくれます。
他にも、インスリンの働きを正常に戻す作用、動脈硬化を防ぐ作用、心臓を保護する作用などを持ち合わせております。
生活習慣病の人では、血中のアディポネクチン値が低下することが分かっています。
こんなアディポネクチンレベルが最適になれば、食欲の増進が「抑制」され、脂肪の減少を支援する可能性があると報告されていますので、是非是非、生活習慣を見直していきたいところですね。
【まとめ】
・体脂肪の増加を促す3つの要因
;➀炎症 ➁ホルモンの機能不全 ➂食欲の調節異常
・腸での炎症がマイクロバイオームに悪影響を及ぼすと、短鎖脂肪酸の産生が減少し、最終的には脂肪蓄積へと導かれてしまう
・短鎖脂肪酸は、炎症の軽減に関与し、内臓脂肪を軽減する手伝いまでしてくれる働き者
・炎症により肝機能の低下が起こると、腹回りに脂肪が増える要因となり、腹回りの脂肪が増えれば、肝機能が低下する要因となる
・脂肪の管理に関わるホルモン
;・インスリン
・グルカゴン
・エストロゲン
・「インスリン抵抗性」が生じるいちばんの原因
;・血糖値を上昇させる高血糖食品の過剰摂取
・炎症
・摂取するタンパク質を上質なものにし、食事で摂るタンパク質と炭水化物の比率を変えることで、グルカゴンの働きの促進につながる
・エストロゲンレベルが低いと、脂肪の燃焼は減るのに食欲は増進し、お腹まわりにつく内臓脂肪がさらに増えてしまう
・食欲の調節に関わるホルモン
;・レプチン
・グレリン
・アディポネクチン
・レプチンは食欲を抑えるだけでなく、脂肪の代謝自体にもかかわる
・グレリンレベルを下げるには、一日の最初の食事でタンパク質の比率を増やす
・アディポネクチンの作用
;・脂肪分解酵素を活性化する働きがあり、糖や脂肪の消費をサポート
・インスリンの働きを正常に戻す作用
・動脈硬化を防ぐ作用
・心臓を保護する作用 など
【クイズ】
Q1:体脂肪の増加を促す要因のうち、間違っているものはどれか。
①炎症 ②運動 ③ホルモンの機能不全
Q2:脂肪の管理に関わるホルモンでないのは次のうちどれか?
①グルカゴン ②インスリン ③オレキシン
Q3:食欲を抑制するのがグレリン。食欲を亢進するのがレプチン。〇か×か。
回答
Q1の正解:②
体脂肪の増加を促す3つの要因;➀炎症 ➁ホルモンの機能不全 ➂食欲の調節異常
Q2の正解:③
脂肪の管理に関わるホルモンは、インスリン、グルカゴン、エストロゲンですね
オレキシンは睡眠に関係するホルモンです
Q3の正解:×
食欲を抑えてくれるレプチン
食欲をかき立てるのがグレリン
今回は、多くの方が気になる体脂肪に関してみてみました。
余分な脂肪がついてしまう原因が分かることで、対策もしやすくなるのではないでしょうか。
次回は、脂肪も悪者ではないよ、ということと+αのことについてお話できればなと思っております。
次回もよろしくお願いします。
『健康情報を手に入れて、今日も健やかに楽しく過ごしていきましょ~。ではまた。』
【参考文献】
『食べる投資 ハーバードが教える世界最高の食事術』満尾 正著
『食欲人』デイヴィッド・ローベンハイマー著
スティーヴン・J・シンプソン著
『食事のせいで、死なないために』マイケル・グレガー/ジーン・ストーン著
『人生が変わる 神レシピ』メンタリストDaiGo/つっしー著
『一生リバウンドしないパレオダイエットの教科書』鈴木 祐著
『EAT-最高の脳と身体をつくる食事の技術』ショーン・スティーブンソン著
『死ぬまで若々しく健康に生きる老けない食事』スティーブン・R・ガンドリー著
『世界のエグゼクティブを変えた超一流の食事術』アイザック・H・ジョーンズ著
『細胞が生き返る 奇跡の「脂」食革命』ジョセフ・マーコーラ著
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