≪睡眠と記憶力≫
記憶といえば、海馬!
まずは、記憶と海馬の関係からみていきましょう。
記憶と海馬
「脳細胞は増えない」こんな言葉を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。
でも、これは昔の常識で、今となっては非常識となってしまった知識です。
人間は、発達段階に応じた適切な睡眠をとることで徐々に脳が発達していくのです。
カッコつけて言うと、『脳の可塑性』ですね。
記憶を司る脳の海馬は大人になっても発達を続ける場所として知られています。
つまり、大人の脳も眠りによってコンディションを高めれば成長し「頭がよくなる」ということなんです。
いやぁ、夢がありますね。いや、夢しかありませんね。
この「海馬」という脳の部位は、新しく形成された記憶痕跡が最初に保存され、睡眠中に記憶の定着が行われたあとに再び消去される一時記憶装置のような存在。
そんな海馬は睡眠時間によって大きさが変わると言われております。
また、海馬の働きを高め、記憶の港を大きくする睡眠に大きく関わるのが眠りの質ともいわれております。
深いノンレム睡眠を奪われて浅い眠りになると、たとえ睡眠はとっても海馬の学習能力が低下するなんて報告もありますから、もう、質のいい睡眠をたっぷりととるしかありませんね。
睡眠と記憶
記憶というと、すべての情報を保管しておくイメージがありますよね。
でも、全ての情報を保管していたら頭がパンクしてしまいます。
脳は夜の間、次の日に必要となる空き容量を十分に確保するために、新たに形成された神経細胞の接合の大部分を除去していくのです。
睡眠には脳の記憶容量を空ける効果もあるということですね。
つまり、この働きを考えると、忘れることも記憶することと同じくらい大切。
嫌なことがずっと頭に残っていたらメンタル崩壊ですもんね。
睡眠は、このように必要な情報をきちんと保管するだけでなく、いらない情報を捨てるという役割も果たしてくれています。
また、一晩寝た後では、寝る前にアクセスできなかった情報にも、アクセスできるようになるともいわれており、ここからも睡眠の大事さが伺えますね。
就寝前、とくに寝る1時間前は、一日のなかで最も記憶に適している「記憶のゴールデンタイム」とも言われています。
記憶したいことがあるならば、覚えた後に余計な情報を脳に入れなければいいので、寝る直前に覚えたいことを勉強し、すぐ眠ればいいのですね。
脳を労わろう
そんな脳は日々頑張って働いてくれています。
傷だらけになりながら頑張ってくれているのです。
つまり、われわれが休むことが必要なように、脳も日中の活動で損傷した神経ネットワークの回復が必要なんですね。
これはぐっすり眠ることでしか行われず、短時間の浅い睡眠ではこの機能がうまく働かないので、得た情報が脳のなかでうまく整理されず、記憶力の低下につながってしまいます。
脳は睡眠によってクールダウンしながら、日中に得た記憶情報を整理しているので、クールダウン時間を与えてあげるようにしましょう。
記憶と感情
また、脳が感情をともなう記憶を優先させるという事実もあるみたいです。
強い感情をともなう事柄に関しては、脳に残りやすいということ。
そう考えると、トラウマを体験した人は、その晩は眠らないほうがよさそう…。
ストレス状況下で睡眠が不足すると記憶力の低下を招くなんていう事実も。
記憶力の低下は、睡眠不足のあとに決まって起こるわけではないのですが、ストレスと睡眠不足が組み合わさったときにはマイナスの影響が不可避なんだとか。
ストレスも記憶にとっては大敵。
ほかにも、記憶に関しては、社会的承認が、短期記憶において神経細胞間の接合を強めるとの報告もあります。
会社の人や家族などに褒めてもらえたり、認めてもらえたりすれば記憶力がアップするということ。
社会的承認を受けるタイミングが就寝時間に近いほど翌日に記憶が残りやすいとも言われていますので、仕事術なんかにも応用できそうですね。
記憶と香り
また、睡眠中に香りを知覚すると、記憶の定着の促進にも効果があるとの過去の試験などもあるみたいです。
バラやオレンジなどのよい香りを嗅ぎながら眠ることで、記憶機能が向上したと。
睡眠と香りの関わりは、いろいろなものがありますので、好みに合わせて香りを楽しむのもいいかもしれませんね。
睡眠相と記憶
記憶の定着は、脳の覚醒時、ノンレム睡眠中、レム睡眠中の3つの脳の状態のうち、とくに学習直後の睡眠のノンレム睡眠時に行われます。
事実に基づく記憶を定着させ、失われた記憶を回復するのは、深いノンレム睡眠の役割なんですね。
深いノンレム睡眠の時間が長いほど、覚えていた量が圧倒的に多く、翌朝のテストの成績が良いという研究結果もあるくらいです。
また、事実や数字の記憶にはとくに深睡眠(睡眠周期の第3、第4段階)が影響するみたいですよ。
新しい動きを身体に覚えさせるなどのスキル習熟の要であるスピードと正確性の向上は、ノンレム睡眠と直接的なつながりがあり、とくに最後の2時間がカギになるんだとか。
その中でもとくに大切なのは、最後の2時間の間に現れる睡眠紡錘波の数。
睡眠紡錘波とは睡眠周期におけるノンレム睡眠で出現する特有の脳波で、記憶と関連した脳の可塑性のプロセスにかかわっています。
睡眠紡錘波に関連したこととしては、60-80歳の高齢者は、若い人に比べて睡眠紡錘波の数が少なくなっており、なんと40%も減少してしまっているんだとか。
高齢になると記憶力が悪くなるのには、やはりちゃんとした理由があったのですね。
そんな高齢者に朗報が。
深睡眠を刺激すると言われる方法、例えば、日中の運動量を増やすあるいは普段より早く寝るなどを行えば、高齢者の記憶力アップに役立つかもしれないとのこと。
是非、試してみてください。
もちろん、ノンレム睡眠だけが記憶に関わっているというわけではなく、レム睡眠も記憶に関わってくれています。
深い睡眠時には新たに形成された記憶痕跡が固定されるのに対し、レム睡眠では、新鮮な記憶と過去の記憶との新たな組み合わせが生み出されていきます。
睡眠と学力
社会人のみなさんも、今学生のみなさんもこれまでに学校のテストを受けてきたかと思いますが、一夜漬けでテストに臨んだことはありませんか?
正直に言います。僕はあります。
一夜漬けで勉強すると、テスト後にはごっそりその知識は抜け落ち、もう頭の中は空っぽ。何も残っていません。
身になった知識など微塵もなかったなぁと今、回想しております。
十分な睡眠をとっている人は、記憶力や集中力、創造的思考力が向上するため、学校や仕事で高い成果を出すことができます。
ある研究では、計測期間を通じて「長く」「規則性のある」、しかも「質が高い」睡眠をとっていた学生ほどテストの成績が良かったことがわかっています。
つまり、「勉強ができないのは親譲りで生まれつき」と諦めている人も、規則正しく質の高い睡眠習慣を極めることで、「遺伝による頭の良さ」に対抗できるというわけですね。
これで希望の光が見えてきた人もいるのでないでしょうか。いることを祈っております。
学習直後の睡眠が、記憶の定着には必要でして、記憶を定着させるには、学んだ日の夜の睡眠がカギを握っているわけです。
覚えたことや理解したことをできるだけ脳に留めて発揮したいならば、その前夜こそしっかり睡眠をとるべきなんですね。
何かを新しく学習したその日の夜に眠らないと、記憶を刻みつけるチャンスを失ってしまうわけです。
一夜漬けしていた過去の自分にも教えてあげたい事実ですわ。
パソコンでつくった新しいファイルを、「名前をつけて保存」することに似ていますよね。
つまり、一夜漬けは頑張って作ったファイルを保存せずに消してしまっているようなもの。なんとまぁ悲しい現実。発狂ものです。
効率的かつ迅速に学びたいなら、逆に眠ったほうがいいということ。
現在、子どもを持つ親御さんにとっては、子どもの学力向上には興味があるところかと思います。
やはり、長期記憶の確立には、試験の数日前から少しずつ繰り返し勉強すること、そして学んだことを保存し、不要な情報を整理するために学習後に深い睡眠をたっぷりとることが大事と言われています。
もともとの能力や才能だけにかかわらず、睡眠時間を適切にとっている子どもが知性や学力を伸ばしていけると言われていますし、睡眠障害や短時間睡眠と成績の低下に明らかな関連が認められたとの調査結果などもありますので、お子さんには、規則正しく、ぐっすり眠るようにしてあげましょう。
睡眠とIQ
健康でよい睡眠をとれている人と比べて、睡眠不足の人はIQが20も下がるんだと。
IQが標準より20下がるというのは、いわゆる認知症と同等レベルの認知能力となってしまうので、睡眠不足は見逃せない状態ということですね。
睡眠と運動能力
『学習には睡眠が不可欠』説は、ダンス/楽器/車の運転/スポーツの習得でも同じ効果が証明されています。
練習が完璧をつくるのではなく、練習し、その後で一晩ぐっすり眠ることが完璧をつくるのですね。
つまり脳は睡眠の力を借りて、その動きを自動化させるようにしているのです。
高いパフォーマンスを発揮するためにも、夜のあいだにぐっすり眠ることは、記憶力や身体能力の向上に不可欠だということですね。
【まとめ】
・記憶を司る脳の海馬は大人になっても発達を続ける場所
・海馬は睡眠時間によって大きさが変わる
海馬の働きを高め、記憶の港を大きくする睡眠に大きく関わるのが眠りの質
➝質のいい睡眠をたっぷりとることが大事
・脳は感情をともなう記憶を優先させる
・社会的承認が、短期記憶において神経細胞間の接合を強める
・バラやオレンジなどのよい香りを嗅ぎながら眠ることで、記憶機能が向上する
・学校や仕事で高い成果をだすためには
;「長く」「規則性のある」「質のいい」睡眠をとる
・もともとの能力や才能だけにかかわらず、睡眠時間を適切にとっている子どもが知性や学力を伸ばしていける
・長期記憶の確立には
;・試験の数日前から少しずつ繰り返し勉強する
・学習後に深い睡眠をたっぷりとる
・睡眠不足の人はIQが20も下がる
;IQが標準より20下がるというのは、いわゆる認知症と同等レベルの認知能力
・『学習には睡眠が不可欠』説は、ダンス/楽器/車の運転/スポーツの習得でも同じ
【クイズ】
Q1:脳細胞は増えない。〇か×か。
Q2:睡眠不足の人のIQはどの程度下がるか?
①下がらない ②10 ③20
Q3:『学習には睡眠が不可欠』説は、ダンス/楽器/車の運転/スポーツの習得でも同じ。〇か×か。
回答
Q1の正解:×
人間は、発達段階に応じた適切な睡眠をとることで徐々に脳が発達していきます
記憶を司る脳の海馬は大人になっても発達を続ける場所です
Q2の正解:③
睡眠不足の人はIQが20も下がってしまいます
IQが標準より20下がるというのは、いわゆる認知症と同等レベルの認知能力です
Q3の正解:〇
その通りです
動きの記憶にも睡眠は大切な役割を果たしています
今回は、睡眠と記憶力に関してみてきました。
みなさんもよい睡眠をとって、脳力を上げていきましょう。
『健康情報を手に入れて、今日も健やかに楽しく過ごしていきましょ~。ではまた。』
参考文献
『よく眠るための科学が教える10の秘密』リチャード・ワイズマン著
『スタンフォード式 最高の睡眠』西野 精治著
『賢者の睡眠 超速で脳の疲れを取る』メンタリストDaiGo著
『一流の睡眠』裴 英洙著
『睡眠こそ最強の解決策である』マシュー・ウォーカー著
『世界の最新論文と450年企業経営者による実践でついにわかった 最強の睡眠』西川 ユカコ著
『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』ショーン・スティーブンソン著
『最高の体調』鈴木 祐著
『ぐっすり眠る習慣』白濱 龍太郎著
『世界最高のスリープコーチが教える 究極の睡眠術』ニック・リトルヘイルズ著
『Sleep,Sleep,Sleep』クリスティアン・ベンディクト著 ミンナ・トゥーンベリエル著
『最高のリターンをもたらす超・睡眠術 30のアクションで眠りの質を高める』西野 精治著 木田 哲生著
『不老長寿メソッド 死ぬまで若いは武器になる』鈴木 祐著
『眠る投資 ハーバードが教える世界最高の睡眠法』田中奏多著
『熟睡者』クリスティアン・ベンディクト著 ミンナ・トゥーンベリエル著
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