前回、睡眠の質に関して簡単にまとめさせていただきました。
今回からは、「睡眠の質を上げるアプローチ法」をさまざまな角度からみていこうかと思います。
今回は、「睡眠時間」に着目してみました。
【睡眠の質を上げるアプローチ】
《睡眠時間へのアプローチ》
最適な睡眠時間
みなさんは最適な睡眠時間はどれくらいだと思いますか?
以前、巷では「8時間」は睡眠時間を取らないといけないなどと言われていた時期もあったとかなかったとか。
実際、「何時間寝れば良い」という絶対的な尺度はないと言います。
個々人で必要な睡眠時間は違うので、これと言った数字は出せないということですね。
しかも、睡眠の問題を「時間」でコントロールするのは難しいです。
睡眠には何時間眠ったかという「量」だけでなく、深く眠れているかという「質」の方も大切です。
睡眠の質こそが脳機能と免疫システムの円滑な働きに重要で、健康維持の決め手となりますからね。
また、睡眠時間に囚われてしまう「睡眠時間の義務感」は、快眠の大敵になると言われていますので、注意が必要。
何時間眠ったかを意識するよりも、起床後4時間後に頭がすっきりして活動できる睡眠時間を意識することの方が重要みたいです。
まぁ、世の中の圧倒的多数の人たちにとって1日に必要な睡眠時間は、バリアブルスリーパーに求められる「6-9時間」だと言われていますので、そのあたりで落ち着く人がほとんどかとは思います。
また、ある報告では、人間がもっとも長生きできる睡眠時間は「6-8時間」ともわかっているとのことであり、心身のパフォーマンスを最大限に引き出すためにも、7時間前後の睡眠を意識するのは間違いではなさそうです。
個々人それぞれで必要な睡眠時間は異なりますが、年代でも必要な睡眠時間は異なります。
人は幼児期から思春期には、生物学的に成人よりもはるかに多くの睡眠時間が必要とされます。
平均的なティーンエイジャー(14-17歳)に必要な睡眠時間は、8-10時間程度。
平均的な成人は7-9時間程度。
このように年代によっても必要な睡眠時間は変わってきます。
ここらへんも意識したいところではありますね。
あとは、以前にも書かせていただきましたが、睡眠に関しては、特別な曜日を作らないことがやはり大事みたいです。
曜日に関係なく睡眠のリズムを一定に保つことこそがメリットだと。
眠るコアタイム(いつも決まって眠っている時間)と起きる時間は意識的にほぼ一定にすることで、睡眠の質がアップします。
その他に睡眠の質を上げるために重要なのは、生体リズムに逆らわないこと、ホルモンの働きを最大化することになります。
そのためには、「睡眠時間」だけでなく、「睡眠時間帯」にも気を配るべきかと。
以前にも書かせていただきましたが、成長ホルモンの分泌がもっとも盛んになるのが「眠りに落ちてから3時間くらいの間=寝入って最初に訪れる深い眠りのとき」です。
ですので、健康的で質の高い睡眠のために、寝落ち後の最初の3時間を大事にしていきましょう。
睡眠時間と健康リスク
睡眠時間と健康リスクとの関係もここでみていきましょう。
成人では7-9時間の睡眠をとる場合に有病率が最も低いことがわかっております。
その他の年代では、ティーンエイジャーでは少なくとも8時間、学童期では9時間、幼児の場合は約11時間の睡眠をとっている場合に有病率が最低となります。
「睡眠時間」に関しては、短くても長くても問題が生じてきます。
睡眠不足は健康に良くないことはみなさんよくご存じかと思いますので、長時間睡眠による影響に焦点を当ててみていきましょう。
平均の睡眠時間が9時間に達するまでは死亡リスクは下がり続けるが、9時間を越すと逆に死亡リスクは増加すると報告されております。
かつ、9時間以上眠る人の死因は、肺炎などの感染症やガンが多いこともわかっております。
一般的な人については、睡眠時間が「9時間」を超えると心身のコンディションへのさまざまなデメリットが出てくるということです。
がんや糖尿病、心血管系疾患などのリスク、さらに認知機能低下のリスクが増加してしまうのですね。
睡眠不足も体に良くないけれど、「寝すぎ=過眠」も同じくらい健康に悪影響を及ぼす恐れがあることを知っておきましょう。
推奨される睡眠時間よりも長く眠る人は、質の悪い睡眠を補うために追加的な睡眠時間を必要としているとも言われておりますからね。
平日眠れないからと、週末に「寝だめ」する人もいるかと思いますが、そこも注意が必要と。
基本的に私たち人間は「寝だめ」することができないと言われています。
普段の睡眠不足を休日の過眠で埋め合わせようというのは、それ自体が無理な話であり、逆に過眠による悪影響が出てしまうので、「寝だめ」も考え直す必要がありそうです。
起床時間
質の高い睡眠のためには「毎朝、同じ時間に起きる」ことが非常に重要なんだと。
無理をしてでも起きる時間は守る方がいいみたいです。
睡眠時間は固定できなくても、朝の起床時間を固定できれば、その日のうちにズレかけた睡眠リズムを修正できると言われております。
毎朝同じ時間に起きようとすると睡眠時間が足りなくなり、昼間の眠気を我慢できないという人には『昼寝』がオススメになります。
「30分以内」を「2回まで」という制限付きですが、是非昼寝を取り入れてみてください。
あとは起床時間として、「朝7時より早く起きないほうが健康にいい」ことも科学的に判明しております。
ウエストミンスター大学の研究で、午前7時より前に起床すると、コルチゾールというホルモンの分泌量が通常よりも増加することがわかっております。
また、朝7時より前に起きるとその分泌量がピークを迎えた状態で“高止まり”してしまうと。
そのままですと、ギアが入りっ放しになって体が休まらず、慢性疲労の状態に陥って、結果的に老化や炎症を引き起こすリスクが高まってしまいます。
コルチゾールは“諸刃の剣”でもあり、分泌量が増え過ぎると、逆に高血圧や高血糖などの健康リスクを高めてしまうことにもつながりますので、注意が必要かと。
同じくウエストミンスター大学の研究で、朝7時よりも前に起きると1日のエネルギーの消耗が通常よりも激しくなり、怒りや苛立ちといったネガティブ感情が生まれやすくなることもわかっております。
人間の体は日が落ちたら眠くなり、日が昇ったら活性化するようにできています。
太陽が昇る前に起きてしまうような“超早起き”は、本来の生体リズムに逆行する行為になりますので、生体リズムに沿った起床を心掛けましょう。
その際には、以前紹介した「クロノタイプ」を参考にしてみてください。
自分に適した起床時間もやはり、遺伝子による自分のクロノタイプ(朝型夜型)によって決まってくると言われておりますので。
【まとめ】
・「何時間寝れば良い」という絶対的な尺度はない
・睡眠には何時間眠ったかという「量」だけでなく、深く眠れているかという「質」の方も大切
・「睡眠時間の義務感」は、快眠の大敵
・人間がもっとも長生きできる睡眠時間は「6-8時間」
・曜日に関係なく睡眠のリズムを一定に保つ
;眠るコアタイム(いつも決まって眠っている時間)と起きる時間は意識的にほぼ一定にすることで、睡眠の質がアップ
・成人では7-9時間の睡眠をとる場合に有病率が最も低い
・平均の睡眠時間が9時間に達するまでは死亡リスクは下がり続けるが、9時間を越すと逆に死亡リスクは増加する
・「毎朝、同じ時間に起きる」
・睡眠時間が足りなくなり、昼間の眠気を我慢できないという人には『昼寝』がオススメ
・「朝7時より早く起きないほうが健康にいい」
・午前7時より前に起床すると、コルチゾールの分泌量が通常よりも増加する
・「クロノタイプ」を参考にする
【クイズ】
Q1:「必要な睡眠時間は人それぞれだ」。〇か×か。
Q2:有病率が最も低くなる睡眠時間は以下のうちどれか。
①6時間 ②8時間 ③10時間
Q3:朝何時より前に起きると健康によくないか。
①6時 ②7時 ③8時
回答
Q1の正解:〇
「何時間寝れば良い」という絶対的な尺度はありません
睡眠には何時間眠ったかという「量」だけでなく、深く眠れているかという「質」の方が大切です
Q2の正解:②
成人では7-9時間の睡眠をとる場合に有病率が最も低い
ティーンエイジャーでは少なくとも8時間、学童期では9時間、幼児の場合は約11時間の睡眠をとっている場合に有病率が最低となります
Q3の正解:②
「朝7時より早く起きないほうが健康にいい」といわれております
午前7時より前に起床すると、コルチゾールの分泌量が通常よりも増加することがわかっておりますので
今回は、「睡眠の質を上げるアプローチ法」として“睡眠時間”に焦点を当ててみてきました。
次回は、“睡眠習慣”に焦点を当てて紹介させていただければと思います。
『健康情報を手に入れて、今日も健やかに楽しく過ごしていきましょ~。ではまた。』
参考文献
『よく眠るための科学が教える10の秘密』リチャード・ワイズマン著
『スタンフォード式 最高の睡眠』西野 精治著
『賢者の睡眠 超速で脳の疲れを取る』メンタリストDaiGo著
『一流の睡眠』裴 英洙著
『睡眠こそ最強の解決策である』マシュー・ウォーカー著
『世界の最新論文と450年企業経営者による実践でついにわかった 最強の睡眠』西川 ユカコ著
『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』ショーン・スティーブンソン著
『最高の体調』鈴木 祐著
『ぐっすり眠る習慣』白濱 龍太郎著
『世界最高のスリープコーチが教える 究極の睡眠術』ニック・リトルヘイルズ著
『Sleep,Sleep,Sleep』クリスティアン・ベンディクト著 ミンナ・トゥーンベリエル著
『最高のリターンをもたらす超・睡眠術 30のアクションで眠りの質を高める』西野 精治著 木田 哲生著
『不老長寿メソッド 死ぬまで若いは武器になる』鈴木 祐著
『眠る投資 ハーバードが教える世界最高の睡眠法』田中奏多著
『熟睡者』クリスティアン・ベンディクト著 ミンナ・トゥーンベリエル著
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