今回は、「睡眠の質を上げるアプローチ法」の「睡眠環境」に着目してみていきましょう。
まずは前編から。
【睡眠の質を上げるアプローチ】
《睡眠環境へのアプローチ》
睡眠の質を高めるためには、やはり「睡眠環境」も大事になってきます。
実際、寝室のノイズを耳栓でブロック、外部からの光をアイマスクでシャット、寝る前に換気を行うなど、ちょっとした変化で大きな改善を見込めるのが睡眠環境の魅力ですので、是非とも参考にしてみてください。
回復ルームの最も重要な役割は「眠っている人に安心感を提供すること」です。
安心を感じるものを部屋に持ち込むと、頭の警戒モードのスイッチがオフになり、リラックスした状態で睡眠サイクルに入ることができます。
旅行に、パートナーのTシャツ、あるいは自分の枕をもっていくなんて人もいらっしゃいますもんね。
睡眠を改善したいと考えている方は、是非とも睡眠環境に投資してみてください。
「スリープキット」のグレードアップ、「光目覚まし時計」「遮光ブラインド」「暖色の電球」にお金を使うのが、賢い睡眠投資かと。
やはりそうなのかと思う報告を1つ紹介しますね。
年収が1千万円以下の人たちに比べ1千万円以上の人たちは、「寝床でスマホを使用しない」「早寝早起きを心がけている」「寝具にお金をかける」という傾向があったとのこと。
仕事ができる人は、睡眠にも力を入れていることがわかりますね。
音を操る
まずは、“音”からみていきましょう。
2018年に世界保健機関(WHO)欧州地域事務局が発表した「欧州環境騒音ガイドライン」では、「過度な騒音は高血圧や心疾患につながるおそれがある」と。
なんとまあ怖い報告ですよね。
このような深い睡眠を妨げる「周囲の音」へのスタンダードな対策として挙げられるのは、防音・遮音加工が施されたカーテンや、睡眠に特化された耳栓などで「周囲の音をシャットアウトする」ことかと。
性別によって反応しやすい音を周囲から遠ざける工夫をするのも、睡眠改善策のひとつになりますね。
ある研究では、音のうるささの感受性について、男性に比べ女性は10dB程度も敏感に音を感じていることがわかりました。
つまり、女性の方が小さい音にも敏感であることがわかりますね。
10dBは感覚的には2倍の大きさの差があるとのことですので、結構な差ですよね。
プラスして、苦情対象となりやすい低周波音ですが、こちらに関しても性差があると。
一般的に女性の方が低周波音に対して敏感であることもわかっております。
また、ホワイトノイズを流しておくと、ほかの突発的で耳障りな音(人の声や物音、家の中の生活音や外からの騒音)がかき消されて気にならなくなるので、これも良い方法かと。
自然の風や波の音など、適度な雑音を聞きながらふとんに入るのもいいかもですね。
騒音対策ではないですが、夕食後から就寝前(21時前後)に20分前後、音楽を聴くのもぐっすり眠るために効果的と言われていますので、是非とも音楽好きな方は取り入れてみてくださいね。
寝室は整理整頓する
寝室が散らかっていると、それが気になってストレスとなり、睡眠の質が低下してしまうことがわかっています。
不安があってなかなか眠れない人ほど、部屋が散らかっているとそれが必要以上に気になって、さらに眠れなくなってしまいますので、日々の整理整頓を心掛けましょう。
可能なら寝室はなるべく質素にしましょう!
夜は照明を暗くする
睡眠と言えば、「メラトニン」ですよね。
メラトニンは夜9時頃から分泌され始め、その後も数時間、分泌量は増え続けます。
夜になると自然に眠気を感じてくるのはそのためですね。
メラトニンの分泌は「光」というファクターに左右され、暗いと分泌は促進、明るいと抑制されます。
ですので、メラトニンの分泌が始まる夜9時頃になったら、寝室だけでなくリビングなどの居室の照明も少しずつ落とすように気を配れば、より自然に眠りに就くことができ、かつぐっすりと眠ることができます。
また、睡眠中は部屋を真っ暗にするのが理想的ですので、怖い人いるかもしれませんが、是非とも今夜から暗闇とお友達になってください。
光と睡眠の関係で言えば、「入眠時間の後退」ですよね。
科学技術に溢れた現代の夜は、夜なのに明るい。
そうなんです。現代の問題は、日没後に暗闇と静寂が訪れないことなのです。
もちろん、街中だけでなく、家の中でも同じことが言えます。
テレビやスマホ、パソコンなど明るい光を放つ電子機器がたくさん。
いつでも明るい環境はつくり出せてしまいます。たとえそれが夜の時間であろうと。
睡眠に関して考えるのであれば、まずこの状況に対する意識から変えていく必要があると。
「朝の8時も夜の20時も同じような照明で明るい状態は尋常ではない」ということに気付くだけでも違うといいます。
意識が変わったら実行に移しましょう。
皮膚にも光を感知する受容体が存在しますので、寝室に光があると、身体はそれを感知して脳や臓器に通達してしまいます。
睡眠障害に悩まされている場合には特に、寝室を暗くするようにしましょう。
「絶対に明かりをつけてはならない」くらいの強い気持ちを持ってもいいのかもしれませんね。
しっかりとした明かりでない小さい光であれば大丈夫だろうと思われる方もいらっしゃるかもしれませんので、その点に関しても注意喚起を。
電子機器などのスタンバイモードの光は、まるでレーザー光線のように脳の松果体に伝わり、メラトニン生成に差し障ることがわかっています。
あんな小さな光でも影響が出るわけですから、もう真っ暗以外の選択肢はないですよね。
寝室を暗くするには1級の遮光カーテンを使うのが理想です。
今では、スマホと連動して開閉を調整できるものなども売られていますので、楽しみながら探してみるのもいいかもしれません。
これで、寝室を暗くすることできました。
次は、入眠準備段階の環境もどんどん暗くしていきましょう。
夜は、寝室はもちろん、居間もキッチンもトイレもお風呂も、あまり明るくしないほうがいいのです。
寝る前の歯磨きでバスルームのまぶしい蛍光灯を浴びてしまっては、元も子もありませんからね。
最後に起きる時の話を少しだけ。
とりわけ真っ暗にした部屋では、光目覚まし時計が絶大な効果を発揮するといいます。
光目覚まし時計には、注意力を高め、認知力と運動能力を向上させ、気分を上げて幸福感を高める効果があると言われていますので、是非とも取り入れてみてください。
僕も光目覚まし時計で毎日起床しています。
念のため、アラームも掛けてはいるのですが、徐々に明るくなる光によってアラーム前にすっきりと目覚めることができています。
アラーム前に起きられると、達成感も感じられますので一石二鳥です。
[照明の程度]
目の網膜に500ルクス以上の光が届くと、メラトニンの分泌が抑えられてしまうことがわかっています。
また、一般的な日本の家庭の照明は200-500ルクス程度ですが、200-300ルクス程度の光を見ただけでもメラトニンの分泌が減ってしまうこともわかっています。
一般的な家庭の照明下では、夜に家にいるだけで、メラトニンを減らしてしまうことになりかねませんので、どの家庭でも対策は必要そうです。
暗い部屋で横になり、外部からの情報を避けるだけで、脳はリラックスできますので、夜は暗い状況を作り、その中で過ごすようにしましょう。
[照明の色]
照明の色も睡眠に影響を与えます。
暖かみのあるオレンジ色なら心地よい眠りに導いてくれますので、夜の明かりは白熱灯のような温かいオレンジ色の電球がオススメです。
理想は、ホテルのバーのように、オレンジ系の明かりが少しだけムーディに灯っている状態ですね。
また、赤い光はメラトニンの分泌を抑えないので眠気を誘う効果があります。
夜になったら薄暗い赤い照明を使うようにしてもいいかもしれません。
赤い光は、体内時計とメラトニンの抑圧にもっとも影響力が小さいと言われていますからね。
暗くなったらキャンドルの優しい光をともして睡眠の質を高めていきましょう。
『光を制するものは睡眠を制する』です!
アンバーグラスを使う
夜が更けたら、寝室の照明は10ルクス以下まで暗くするのが基本中の基本だと。
「アンバーグラス」とは、本来はスキーなどに使うアイテムなのですが、オレンジ色のレンズを採用したサングラスのことで、電子機器や蛍光灯から出るブルーライトをブロックして脳の覚醒を防ぐ働きも持っています。
なるべく光の影響を最小限に抑えたい人は使ってみる価値ありです。
温度・湿度の設定ポイント
概日リズムの一環として、体温は夜になると自然に下がりますが、不眠症の人は寝る直前の体温が通常より高くなる傾向にあります。
もちろん、環境温にも影響されますので、室内の温度が高すぎるとうまく体内温度を調整できず、睡眠の乱れにつながってしまいます。
自然な睡眠・覚醒リズムを正しく保つには、就寝前の室内温度を上げすぎないように注意しましょう。
ほとんどの人にとって、理想的な寝室の温度は摂氏18.3度なんだと。
多くの研究者の間でも「寝室の温度は18.3度近辺に保つのが理想」との結果で一貫しているとのこと。
ですので、寝室の温度は摂氏18度くらいにしましょう。
ちなみに、湿度は冬/夏ともに65パーセントくらいが良いそうです。
一応、上限と下限もお示ししておきます。
快眠のための寝室の温度は、冬は温度16℃以上、夏は26℃以下が最適だそうです。
ここで、エアコンに関しての情報を。
やっている人がほとんどかもしれませんが、部屋にエアコンがある人は、暑い夜には眠る前に部屋を涼しくしておきましょう。
で、その際のエアコンの設定温度は日中より1度上げることをオススメします。
睡眠時は深部体温が日中よりも1度ほど下がりますからね。
今はリモコン1つで温度調整できるので、温度調整なんて面倒くさいなんていう人も少ないかと思いますが、もしかしたらいるかもしれないそのような人のために1つ。
感覚的なものになってしまいますが、「他の部屋よりも涼しくする」ことに着目してみてください。
少し脱線しますが、インフルエンザに毎年かかってしまうという人っていますよね。
そのような人は、温度20℃以上で湿度が50-60%という状態が、一番インフルエンザにかかりにくいと言われていますので、参考にしてみてください。
インフルエンザや風邪は、無防備になっている寝ているときこそ要注意ですからね。
感染症などを起こすと、脅威を認識した身体がそれに抗おうとすると、ストレスが身体を刺激し、体温の上昇を招くため、期せずして眠りにつきにくくなってしまいます。
風邪など引かないよう、予防に努めましょう。
寝る前に十分な換気を行う
寝ている部屋の「空気の質」、もっと言うと、「二酸化炭素の量」が睡眠の質を左右することが判明しています。
換気した部屋で寝たグループは、睡眠の質が上がっただけではなく、翌日の集中力や論理的思考力もアップしていたとの報告もあります。
ですので、睡眠前に寝室の換気を行うようにしましょう。
寝る前に5-10分ぐらい窓を開けておけば問題ないでしょう。
お風呂に入っている間に換気しておく、なんてのもいいかもしれませんね。
その他の方法としては、寝室に「植物を置く」のも一案かと。
換気に関して少しだけ僕の小話を。
僕は田舎出身なのですが、夏休みにおばあちゃん家に泊まりに行ったときなどに、窓を全開にして夜通し寝ていました。
おじいちゃん、おばあちゃんはエアコンが苦手な人だったので、エアコンはありませんでした。
ですので窓を全開にして寝ていたわけです。
もちろん暑いのですが、ぐっすり眠れていた記憶があります。
今振り返って考えてみると、窓を開けていたことでしっかりと換気されていたのが要因なのかもしれませんね。
人は窓を開けたままのほうがよく眠れるのかもしれません。
もちろん、防犯には気をつけないといけませんが。
寝室には時計を置かない
みなさんは毎日目覚まし時計で起きていますか?
YESと答える人が多いかなと思いますが、目覚ましによる起床にも問題点があるみたいなのです。
目覚ましで起きた人は起床直後に血圧が急上昇し、脈拍も上がるんだとか。
短時間の間に何度も目覚ましで起こされるのは、そのたびに心臓ショックを与えるということだ、なんて表現している人もいるくらいです。
もう一つマイナスな点としては、不安を煽る可能性があることです。
うまく眠るのが苦手な人が、寝つけない状態で時計を見たときに「こんな時間なのにまだ起きている」などといらぬ不安を抱く傾向が高くなってしまいます。
不安が募れば、余計に寝入るのが難しくなりますので、問題ですよね。
対策としては、もちろん時計を置かないのが一番いいのかもしれませんが、なかなか目覚ましなしには起きれない人もいるかと思いますので、見えない範囲に置くようにするか、あるいは、先程紹介した「光目覚まし時計」を使ってみるのもいいかもしれませんね。
香りも快眠の味方
好きな香りに包まれていれば幸せな気持ちになりますし、快眠の味方になってくれます。
香りを取り入れる際には、夕食後から就寝前(21時前後)に20分前後取り入れるのがオススメです。
リラックスして落ち着く鎮静効果のある香りを選ぶといいでしょう。
いくつか紹介させていただきます。
[ラベンダー]
快眠・安眠に効果がある香りといえば、やはり「ラベンダー」。
ラベンダーの香りは、その素晴らしい催眠効果から、不眠症の治療にも使われているほどです。
西イングランド大学の研究で、不眠症の女性にラベンダーから抽出したオイルを染み込ませたシーツで睡眠をとらせる実験を行ったところ、不眠症が改善して睡眠の質も高まりました。
他にも、ラベンダーなどの心地よいアロマの香りには、寝付きをよくして睡眠の質を上げる以外にもうひとつ、「悪夢を見なくなる」効果があることがわかっています。
嫌なことがあった日は、決まって悪い夢を見る/不安事や心配事があるとなかなか眠れないという人は、是非ともラベンダーなどの「睡眠を誘ういい香り」を上手に活用して安らかな眠りを手に入れるようにしてみてください。
ラベンダーのアロマオイル(エッセンシャルオイル)をキャンドルやランプで焚く、アロマディフューザーや霧吹きでオイルを部屋にシュッシュするなど、寝る30分ぐらい前に寝室をラベンダーの香りで満たしておくようにするといいでしょう。
[コーヒー]
もうひとつ、香りとして効果があるのは、「コーヒー」になります。
コーヒー豆の香りが睡眠にいい効果を与えることもわかっております。
夜にコーヒーを飲むのは逆に眠れなくなってしまいますので、香りだけ楽しんでみてください。
【まとめ】
音を操る
・「過度な騒音は高血圧や心疾患につながるおそれがある」
・ホワイトノイズを流しておくと、ほかの耳障りな音(人の声や物音、家の中の生活音や外からの騒音)がかき消されて気にならなくなる
・夕食後から就寝前(21時前後)に20分前後、音楽を聴くのもぐっすり眠るために効果的
寝室は整理整頓する
・寝室が散らかっていると、それがストレスとなり、睡眠の質が低下してしまう
夜は照明を暗くする
・メラトニンの分泌が始まる夜9時頃になったら、寝室だけでなくリビングなどの居室の照明も少しずつ落とす
・寝室を暗くするには1級の遮光カーテンを使うのが理想
・寝室はもちろん、居間もキッチンもトイレもお風呂も、あまり明るくしない
・一般的な日本の家庭の照明は200-500ルクス程度ですが、200-300ルクス程度の光を見ただけでもメラトニンの分泌が減ってしまう
・暖かみのあるオレンジ色なら心地よい眠りに導いてくれる
アンバーグラスを使う
・「アンバーグラス」は、電子機器や蛍光灯から出るブルーライトをブロックして脳の覚醒を防ぐ働きも持っている
温度・湿度の設定ポイント
・理想的な寝室の温度は摂氏18.3度
・湿度は冬/夏ともに65パーセントくらいが良い
寝る前に十分な換気を行う
寝ている部屋の「空気の質」、もっと言うと、「二酸化炭素の量」が睡眠の質を左右することが判明している
寝室には時計を置かない
・目覚ましで起きた人は起床直後に血圧が急上昇し、脈拍も上がる
香りも快眠の味方
・快眠を導く香り
;・ラベンダー
・コーヒー
【クイズ】
Q1:睡眠の質を上げるためにホワイトノイズを使うのはノイズなのでダメだ。〇か×か。
Q2:快眠環境として正しいものはどれか。
①明るい部屋 ②目覚まし時計を置いている ③質素な寝室
Q3:快眠を導く香りとして正しいのは以下のうちどれか。
①ラベンダー ②ペパーミント ③ローズマリー
回答
Q1の正解:×
ノイズとは言っていますが、問題ありません
ホワイトノイズを流しておくと、ほかの耳障りな音(人の声や物音、家の中の生活音や外からの騒音)がかき消されてその他の音が気にならなくなります
Q2の正解:③
寝室がごちゃごちゃしていると眠れません
不要なものはなるべく排除するようにしましょう
Q3の正解:①
快眠を導く香りの代表は、ラベンダーやコーヒーですね
②③は交感神経を刺激する香りですので、逆効果ですね
今回は、「睡眠の質を上げるアプローチ法」として“睡眠環境”に焦点を当ててみてきました。
次回も、“睡眠環境”に焦点を当てて紹介させていただきますが、特に「寝具」に着目してみようと思います。
『健康情報を手に入れて、今日も健やかに楽しく過ごしていきましょ~。ではまた。』
参考文献
『よく眠るための科学が教える10の秘密』リチャード・ワイズマン著
『スタンフォード式 最高の睡眠』西野 精治著
『賢者の睡眠 超速で脳の疲れを取る』メンタリストDaiGo著
『一流の睡眠』裴 英洙著
『睡眠こそ最強の解決策である』マシュー・ウォーカー著
『世界の最新論文と450年企業経営者による実践でついにわかった 最強の睡眠』西川 ユカコ著
『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』ショーン・スティーブンソン著
『最高の体調』鈴木 祐著
『ぐっすり眠る習慣』白濱 龍太郎著
『世界最高のスリープコーチが教える 究極の睡眠術』ニック・リトルヘイルズ著
『Sleep,Sleep,Sleep』クリスティアン・ベンディクト著 ミンナ・トゥーンベリエル著
『最高のリターンをもたらす超・睡眠術 30のアクションで眠りの質を高める』西野 精治著 木田 哲生著
『不老長寿メソッド 死ぬまで若いは武器になる』鈴木 祐著
『眠る投資 ハーバードが教える世界最高の睡眠法』田中奏多著
『熟睡者』クリスティアン・ベンディクト著 ミンナ・トゥーンベリエル著
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