前回まで、睡眠の質を上げるアプローチをお話させていただいておりました。
今回からはまた食事シリーズなのですが、流れも汲んで『睡眠の質を高める食事』に関してみていこうと思います。
【睡眠の質を高める食事】
前回まで睡眠の質を上げるアプローチを見てきましたので、その流れを汲みまして、食事面から睡眠の質を高めていこうかと思います。
以前にお話しした「食習慣」のお話と重複するところもあるかと思いますが、御容赦ください。
まずは総論的なことを。
やはり「栄養バランスのよい食事を摂ること」を念頭に置きましょう。
偏食による栄養のアンバランスが不眠を招くことがあり、特にビタミンB群とカルシウムの不足は要注意です。
魚で言えばイワシやキビナゴは、カルシウムとビタミンDが両方多く含まれているのでより効果的な食材と言えますね。
また、一般に就寝前に牛乳を飲むと、牛乳に多いトリプトファンやカルシウムが精神を安定させ、よく眠れるといわれていますね。
安眠に導く栄養素
安眠に導く栄養素をそれぞれの食材なども含めて紹介させていただきますね。
まずは、睡眠にはどんな栄養素が必要なのかを見ていきましょう。
・トリプトファン
・ビタミンB6
・グリシン
・ビタミンC
・ビタミンD
・カリウム
・カルシウム
・マグネシウム
・オメガ3脂肪酸
・食物繊維
大きくはこれらの栄養素が睡眠の質をアップさせてくれるものになります。
では、それぞれの特徴をみていきましょう。
[トリプトファン]
トリプトファンは必須アミノ酸の一種で、催眠や精神安定作用があります。
トリプトファンが不足するとレム睡眠で乱れが生じてしまいます。
逆に、トリプトファンレベルが改善すると夜間に目覚めることが減り、起床後の覚醒状態が向上します。
トリプトファンの優れた供給源としましては、
鶏肉、ターキー、ロブスター、卵、チーズ、豆腐、高野豆腐、チョコレート、ほうれん草、カボチャのタネ、ピーナッツ、スピルリナなどが挙げられます。
[ビタミンB6]
ビタミンB6は神経の働きを正常に保ち、催眠、精神安定作用に関わっています。
ビタミンB6はピリドキシンとしても知られ、トリプトファンからセロトニンが産生される工程に欠かせない物質のひとつでもあります。
ビタミンB群はそれぞれ協力し合って働くので、まんべんなく毎日摂るようにしましょう。
ビタミンB6の優れた供給源としましては、
ヨーグルト、サーモン、マグロ、卵、鶏レバー、ヒヨコ豆、にんにく、ほうれん草、カブ、パセリ、唐辛子、アボカドなどが挙げられます。
[グリシン]
グリシンにはノンレム睡眠の質を高め、入眠後の覚醒を減らす(つまりは中途半端に目を覚ます回数が減る)効果があります。
グリシンの優れた供給源としましては、
牛肉、鶏肉、ターキー、サーモン、ピーナッツ、キアヌ、スピルリナ、ブラジルナッツなどが挙げられ、とりわけ骨を煮込んだスープに豊富に含まれます。
[ビタミンC]
ビタミンCが不足の状態となると、睡眠障害が生じて全体の睡眠時間が短くなる可能性が高まってしまいます。
ビタミンCの優れた供給源としましては、
カムカムベリー、アムラベリー、アセロラといった「スーパーフード」に含まれるほか、パプリカ、葉物野菜、ブロッコリー、キウイ、イチゴ、柑橘類、パパイヤなどの手に入れやすい食品が挙げられます。
[ビタミンD]
ビタミンDは概日リズムにかかわる遺伝子の発現を変えることや、概日リズムと遺伝子を同期してくれる作用があります。
ビタミンDレベルが上昇することで、日中に眠気を感じることが少なくなります。
また、ビタミンDは腸内でカルシウムの吸収を助ける働きもあります。
ビタミンDの優れた供給源としましては、
サーモン、イワシ、タラ肝油、牡蠣、エビ、卵黄、干し(特に天日干しの)キクラゲ・しいたけ・舞茸などが挙げられます。
[カリウム]
カリウムには睡眠効率の改善(正しい睡眠サイクルで眠ること)を促し、入眠後に目覚める回数を減らす効果が期待できます。
カリウムの優れた供給源としましては、
アボカド、葉物野菜、サツマイモ、海藻(とくにダルス)、ココナッツパウダー、黒豆、白インゲン豆、ヨーグルト、サバ、サーモンなどが挙げられます。
[カルシウム]
カルシウムが不足してしまうと、レム睡眠時だけでなくノンレム睡眠時にも睡眠障害が起こる可能性が高まってしまいます。
また、カルシウムには鎮静効果があるため、不足すると神経過敏になって不眠を招いてしまいます。
肉類などのタンパク質や砂糖、塩分などを過剰に摂取すると、カルシウムが消費され、カルシウム不足を招くので注意が必要です。
カルシウムの優れた供給源としましては、
ゴマ、チアシード、アーモンド、ヨーグルト、チーズ、豆類、イワシ、コラードグリーン、ケール、ほうれん草、小松菜、モロヘイヤ、大根葉、カブの葉、京菜、ツマミ菜、広島菜、からし菜、野沢菜、春菊、チンゲン菜などの青菜・緑黄色野菜や、ひじき、昆布などの海藻類やキクラゲなどが挙げられます。
[マグネシウム]
マグネシウムには交感神経系(闘争・逃走反応をつかさどる場所)の活動を抑制し、副交感神経系(安静と消化をつかさどる場所)の活動を優位にする力があります。
また、マグネシウムは抑制性GABAレセプターとの相互作用を通じて抗不安効果をもたらしてくれます。
このように、マグネシウムはカルシウムとともに精神の安定に働きます。
カルシウムとマグネシウムの摂取比率は2-3対1が理想とされています。
マグネシウムレベルを改善すると、睡眠効率が高まり、メラトニンの働きが改善し、コルチゾールレベルが低下し、入眠後に目覚める回数を減らすことができます。
強いストレスや激しいスポーツの後、またはリンを含む加工食品の摂り過ぎは、マグネシウム不足を招きやすいので注意が必要です。
マグネシウムの優れた供給源としましては、
アボカド、カボチャのタネ、アーモンド、ダークチョコレート、葉物野菜、豆腐、納豆、黒豆、脂肪の多い魚、スピルリナ、干しひじき・乾燥ワカメなどの素干しの海藻類などが挙げられます。
[オメガ3脂肪酸]
オメガ3脂肪酸の摂取量を増やすと睡眠が妨害されることが減り、より深く穏やかな睡眠を得られやすくなります。
また、オメガ3脂肪酸(具体的にはDHAオメガ3)の抗炎症作用により、睡眠時無呼吸の症状が軽減されることもわかっています。
オメガ3脂肪酸の優れた供給源としましては、
サーモン、サバ、イワシ、タラ肝油、キャビア、イクラ、牡蠣、藻オイルなどがあげれます。
また、植物由来のオメガ3脂肪酸は、チアシード、アマニ、カボチャのタネ、ヘンプシード、クルミに豊富に含まれます。
[食物繊維]
食物繊維はイヌリンの過剰分泌を防いだり、ビタミンB群の合成に関わり、精神安定に一役買っています。
食物繊維を充分摂っていれば、ビタミンB群の多少の不足は補い、不眠予防の助けになるともいわれています。
食物繊維は、植物性食品である海藻類、豆類、野菜類、きのこ類、果実類などにたくさん含まれています。
ネギ属の野菜もオススメ
特にタマネギがオススメになります。
タマネギは神経を安定させ、睡眠を促す作用があると言われております。
これは、タマネギに多い硫黄を含む成分(含硫有機化合物)によるものですね。
なんと、タマネギをみじん切りにし、就寝時に枕元に置くなんていう方法もあるみたいです。
僕は、確実に泣くと思うので、ちょっとやるにはハードルが高いですが…。
タマネギほどではないみたいですが、ネギ、ニラ、ニンニク、らっきょう、アサツキなど他のネギ属の野菜にも同様の傾向がみられるみたいですよ。
効果的な食べ方
最も効果的なのはカルシウム、マグネシウム、ビタミンDを含む食品を、夕食時に一緒に摂ることになります。
また、食物繊維は野菜、豆類、イモ類、きのこ、海藻、果物、穀物など、いろいろな食品からバランスよく摂ることがポイントになります。
僕のオススメの一品
上記の栄養素とそれを含む食材をみて、僕個人的なオススメの一品を選びました。
是非、参考にしてみてください。
『サーモンアボカド丼の半熟卵のせ』になります。
サーモンとアボカドで上記のほとんどの栄養素を摂取できますし、適切な糖質(ここでは米)は睡眠の質をアップさせてくれますのでね。
アボカドの変色予防でレモン果汁などを使用すれば、ビタミンCも摂取できてより効果的な一品になりそうですね。
可能ならゴマもパラパラと振っておきましょうかね。
卵を半熟にしたのは、単純に僕が半熟卵が好きなだけで、これといった理由はございません…。
睡眠中も脳に働いてもらおう
睡眠への影響を踏まえて制限したほうがいいものも紹介しておきます。
- 糖
糖の摂取が増えすぎると睡眠の質が大幅に低下する恐れがあります。
気をつけましょう。
ですが、適切な糖質は先程も書かせていただきましたとおり、睡眠の質を上げますので、やはりバランスが大事ということです。
- アルコール
適量のアルコールは浅い眠りを誘いますが、深い睡眠の妨げになります。
アルコールが体内に入ると、眠りについた後であっても、レム睡眠の延長や抑圧、もしくはその両方が起こり、脳や身体の機能が十分に回復されない恐れがあります。
また、アルコールは「レム睡眠反跳」と呼ばれる現象を引き起こします。
アルコールの睡眠作用には耐性が生じるため、飲酒を継続していると睡眠時間は徐々に短縮していき、さらに飲酒を中断すると、かえって寝つきが悪くなり、睡眠は浅くなってしまうわけです。
どうしても飲酒したい場合は、最低でもベッドに入る2-3時間前に飲み終えているのが理想です。
- コーヒー
コーヒーも飲み方で良くも悪くも働きます。
以前の記事にも書かせていただきましたが、就寝前にコーヒーを飲んでしまうとカフェインの覚醒作用で睡眠の質が下がってしまいますので、注意しましょう。
カフェインは神経を興奮させる達人ですからね。
カフェインの持続時間は人によりますが、コーヒーの摂取は遅くても夕方までにしておいた方が睡眠のためですね。
【まとめ】
・快眠を導く栄養素
トリプトファン
;トリプトファンレベルが改善すると夜間の目覚めが減り、起床後の覚醒状態が向上
ビタミンB6
;トリプトファンからセロトニンが産生される工程に欠かせない物質のひとつ
グリシン
;ノンレム睡眠の質を高め、入眠後の覚醒を減らす(つまりは中途半端に目を覚ます回数が減る)
ビタミンC
;不足すると、睡眠障害が生じて全体の睡眠時間が短くなる可能性が高まってしまう
ビタミンD
;概日リズムにかかわる遺伝子の発現を変え、概日リズムと遺伝子を同期
カリウム
;睡眠効率の改善(正しい睡眠サイクルで眠る)を促し、入眠後に目覚める回数を減らす
カルシウム
;不足すると、レム睡眠時だけでなくノンレム睡眠時にも睡眠障害が起こる可能性が高まる
マグネシウム
;睡眠効率が高まり、メラトニンの働きが改善し、コルチゾールレベルが低下し、入眠後に目覚める回数を減らす
オメガ3脂肪酸
;睡眠が妨害されることが減り、より深く穏やかな睡眠を得られやすくなる
食物繊維
;食物繊維はイヌリンの過剰分泌を防いだり、ビタミンB群の合成に関わり、精神安定に一役買っている
・睡眠のためには摂取を制限したほうがいいもの
;・糖
・アルコール
・コーヒー
【クイズ】
Q1:睡眠の質の向上のために摂取すべき食べ物として誤っているのは以下のうちどれか。
①ケーキ ②アボカドサラダ ③サーモン丼
Q2:青魚などを食べてオメガ3脂肪酸を積極的に摂ることは睡眠にプラスの効果をもたらす。〇か×か。
Q3:睡眠のためには摂取を制限したほうがいいものとして誤っているのは以下のうちどれか。
①アルコール ②タンパク質 ③コーヒー
回答
Q1の正解:①
糖分の過剰摂取は睡眠の質を下げてしまいますで、注意しましょう
Q2の正解:〇
その通りです
オメガ3脂肪酸の摂取量を増やすと睡眠が妨害されることが減り、より深く穏やかな睡眠を得られやすくなります
Q3の正解:②
タンパク質ではなく、糖ですね
逆に、上記で紹介したタンパク質は積極的に摂取しましょう
今回は、『睡眠の質をあげる食事』に関して簡単にまとめてみました。
食事面からも睡眠の質を上げてみてください。
次回は、『美肌を手に入れるための食事』を簡単にまとめてみようかと。
『健康情報を手に入れて、今日も健やかに楽しく過ごしていきましょ~。ではまた。』
【参考文献】
『食べる投資 ハーバードが教える世界最高の食事術』満尾 正著
『食欲人』デイヴィッド・ローベンハイマー著
スティーヴン・J・シンプソン著
『食事のせいで、死なないために』マイケル・グレガー/ジーン・ストーン著
『人生が変わる 神レシピ』メンタリストDaiGo/つっしー著
『一生リバウンドしないパレオダイエットの教科書』鈴木 祐著
『EAT-最高の脳と身体をつくる食事の技術』ショーン・スティーブンソン著
『死ぬまで若々しく健康に生きる老けない食事』スティーブン・R・ガンドリー著
『世界のエグゼクティブを変えた超一流の食事術』アイザック・H・ジョーンズ著
『細胞が生き返る 奇跡の「脂」食革命』ジョセフ・マーコーラ著
『DNA再起動 人生を変える最高の食事法』シャロン・モアレム著
『この病気にはこの野菜』斎藤 嘉美監修
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