前回までは、睡眠障害による体への影響を実際の疾患に絡めて説明させていただきました。
今回は、睡眠障害による“人間関係”への影響をみていこうかと思います。
≪人間関係への影響≫
睡眠の状態が悪いと、人間関係にヒビが入ってしまいます。
人間関係は、人生の質を左右する大事な要素ですので、大事にしていきたいところ。
睡眠不足で脳の前頭部のエネルギーが低下すると、自制心や道徳心が失われ、とりわけ深刻な状況を生み出しかねません。
実際、眠らないことで、精神が不安定になり、うつ病/不安障害/アルコール依存/薬物依存の発症率が高くなることがわかっております。
睡眠障害でメンタル面の疾患を引き起こしてしまうのですね。
また、統合失調症の患者のおよそ7割は体内時計が昼と夜の時間に同調していないため、寝つきが悪く長時間眠ることができないこともわかっております。
このように、睡眠障害がある病態を引き起こし、その病態が睡眠障害を引き起こすという、悪魔のような負のサイクルが形成されてしまいます。
なんとまあ怖い…。
睡眠不足や睡眠の質の低下は大人だけでなく、もちろん子どもの人間関係にも影響を及ぼしてしまいます。
睡眠障害が、子供の注意欠陥・多動性障害(ADHD)と関連していることはわかっております。
また、ADHDと診断された子供は、睡眠時無呼吸症候群と呼ばれる睡眠障害になりやすいということもわかっております。
子どもの大人と変わらないわけですね。
では、実際にどんな症状によって人間関係にヒビが入ってしまうのかみていきましょう。
不誠実になる
人は、睡眠不足になるほど意志力が弱まって、他人を騙したり、ごまかしたりするようになると言われています。
つまり、睡眠不足の人は「不誠実になりやすい」わけですね。
ちゃんと寝ていないと、やるべきことがあっても周囲の誘惑に勝てず、目の前の欲求にながされがちになってしまいますので、注意が必要です。
『誠実さ』を獲得したい人にとって、睡眠は不可欠です。
感情コントロールが下手になる
以前のブログで、良好な睡眠が衝動抑制の改善につながるよ~というお話を簡単にさせていただきましたが覚えておりますでしょうか。
睡眠を十分にとった人は、前頭前皮質が扁桃体と強く結びつき、感情をコントロールして
いる状態で、感情のアクセル(扁桃体)とブレーキ(前頭前皮質)のバランスがとれている状態です。
しかし、睡眠不足になると、前頭葉は良心の呵責を感じにくくなり、大雑把になり、ぼんやりとし、衝動を抑えられなくなってしまい、感情が暴走してしまいます。
理性はどこえやら状態ですね。
睡眠不足の脳は、ポジティブとネガティブの間を激しく行ったり来たりしている状態になってしまっているわけですね。
実際に睡眠時間が足りていない人は、脳内にある扁桃体という神経細胞の集まりが活性化することで、不安や恐怖を感じやすくなり、怒りっぽくなることもわかっております。
またある研究で、1日の睡眠時間が4時間30分を切る生活が5日間続くと、扁桃体の動きが活発になり、嫌な記憶が脳内にとどまりやすくなることがわかりました。
睡眠が不足した場合は、昼のあいだに脳内にたまった毒素が脳に残ってしまい、頭はスッキリせず気分もいらついてくるわけですね。
そんなこんなで睡眠不足は社会的にも問題を引き起こしていると。
睡眠不足が、様々な年代の子どもで、攻撃性、いじめ、問題行動とのつながりがあると実際に指摘されてしまっております。
このような点からも見逃せない問題のひとつですね。
感情が読めなくなる
カリフォルニア大学の研究で、人は質のいい睡眠がとれなくなると、相手の表情を読み取る能力が低下することがわかりました。
実際の実験においても、睡眠不足の時は、脳の感情を読み取る島皮質前部と前帯状皮質という部位で、画像の表情が「好意的か、敵対的か」を区別できなくなることがわかっています。
つまり、人は睡眠不足になると、相手が好意的な表情をしていても、「自分を敵視している」と誤認してしまう傾向にあるというわけです。
睡眠が乱れると腹側前帯状回がうまく働かなくなり、感情を司る扁桃体がネガティブなことに過剰反応してしまう。
その結果、相手の感情を正確に認知する観察力が落ちてしまう…。
ですので、ちゃんと寝ておかないと、コミュニケーション能力に支障をきたして、大事な人間関係を手放すことにもなりかねないわけです。
気をつけたいですね。
見た目が悪くなる
カロリンスカ研究所の研究で、人はぐっすり寝ると美しくなり、睡眠不足だと外見的な魅力が減じることがわかっています。
しかも、たった数日間の睡眠不足でも人は醜くなるとのこと。
睡眠不足は「顔に出る」というわけですね。
では、どんな感じで顔に出てきてしまうのでしょうか。
よく眠れていない人は肌がくすんで汚くなり、白目の部分も、クリア感に乏しくどんよりした印象を与えます。
これは、交感神経が優位になりすぎて血管がキュッと締まり、血液が十分に流れないことが原因と考えられます。
また、何日か睡眠が不足すると、体内でコルチゾールというストレスホルモンが分泌されます。
コルチゾールはコラーゲンの分泌を抑えるため、皮膚に張りがなくなってシワが寄り、目の周りに隈ができてしまいます。
このように睡眠不足が顔に出てしまうと、元気がなさそうに見えるだけでなく、周囲から「あまりお付き合いしたくない」と思われて距離を置かれる恐れさえあります。
また会社などでも、睡眠不足による顔の印象によって、「この人に任せよう」という気を起こさせにくくしてしまうことで、仕事にも影響が出てしまう可能性も。
実際にある実験で、十分に睡眠をとらなかった被験者を総じて魅力に欠け、健康的でなく、信頼できないと判断したというものもありますので、気をつけたいところですね。
孤独になる
レム睡眠は、ソーシャルスキルの一つである社会情動的な情報を、読み取る力を高めていると言われております。
ですので、睡眠不足になると不安や孤独を感じやすくなり、相手との物理的距離をとるようになる一方で、睡眠不足の人が感じやすい孤立の感覚が交流した相手に伝染してしまいます。
その結果、「孤独」を招いてしまうことに…。
マイナス思考になる
睡眠が不足すると、ちょっとしたミスでも大きなミスに感じてしまうと。
睡眠が整っており、さわやかに頭が働いている状態であれば、多少の失敗も「次はどうすればいいか?」と切り替えられます。
ただし、睡眠不足の状態では、すべてをマイナスに考えてしまうという状態に陥ってしまうわけですね。
【まとめ】
・睡眠不足になると…
;・不誠実になる
・感情コントロールが下手になる
・感情が読めなくなる
・見た目が悪くなる
・孤独になる
・マイナス思考になる
【クイズ】
Q1:睡眠不足によって、活発化する脳領域は以下のうちどれか。
①前頭前皮質 ②島皮質 ③扁桃体
Q2:睡眠不足や睡眠の質の悪さで起こる目のクマは、「青クマ」が原因だ。〇か×か?
Q3:睡眠不足だと心配されることで仲間が増える。〇か×か。
回答
Q1の正解:③
睡眠時間が足りていない人は、脳内にある扁桃体が活性化することで、不安や恐怖を感じやすくなり、怒りっぽくなることがわかっています
Q2の正解:〇
目のクマには、「黒クマ」「赤クマ」「青クマ」「茶クマ」の4種類があります
睡眠の状態が悪いことで起こるクマは「青クマ」で、血流が悪くなることでうっ滞が起こり目の周りの静脈が透けることで青く見えてしまうという病態ですね
Q3の正解:×
仲間は増えませんね
逆に孤独になります
睡眠不足になると不安や孤独を感じやすくなり、相手との物理的距離をとるようになる一方で、睡眠不足の人が感じやすい孤立の感覚が交流した相手に伝染してしまいます
今回は、睡眠障害による人間関係への影響をみてきました。
次回は、仕事への影響をみていきたいと思います。
『健康情報を手に入れて、今日も健やかに楽しく過ごしていきましょ~。ではまた。』
参考文献
『よく眠るための科学が教える10の秘密』リチャード・ワイズマン著
『スタンフォード式 最高の睡眠』西野 精治著
『賢者の睡眠 超速で脳の疲れを取る』メンタリストDaiGo著
『一流の睡眠』裴 英洙著
『睡眠こそ最強の解決策である』マシュー・ウォーカー著
『世界の最新論文と450年企業経営者による実践でついにわかった 最強の睡眠』西川 ユカコ著
『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』ショーン・スティーブンソン著
『最高の体調』鈴木 祐著
『ぐっすり眠る習慣』白濱 龍太郎著
『世界最高のスリープコーチが教える 究極の睡眠術』ニック・リトルヘイルズ著
『Sleep,Sleep,Sleep』クリスティアン・ベンディクト著 ミンナ・トゥーンベリエル著
『最高のリターンをもたらす超・睡眠術 30のアクションで眠りの質を高める』西野 精治著 木田 哲生著
『不老長寿メソッド 死ぬまで若いは武器になる』鈴木 祐著
『眠る投資 ハーバードが教える世界最高の睡眠法』田中奏多著
『熟睡者』クリスティアン・ベンディクト著 ミンナ・トゥーンベリエル著
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