前回まで、睡眠障害によるさまざま影響をみてきました。
今回からは、「睡眠の質」に焦点を当ててみていこうかと思います。
≪質の高い睡眠とは≫
みなさん。質の高い睡眠とはどんなものを想像するでしょうか。
睡眠時間がたっぷりの睡眠。
朝から元気を与えてくれる睡眠。
目覚ましなしで自然と起きられるような睡眠。
いろいろな意見があるかなと思います。
質の高い睡眠とは、ぐっすりと眠れて、目覚めもスッキリで、朝から活力がみなぎるような睡眠かなと。
実際質の高い睡眠は、体調の良さと質の高い仕事のパフォーマンスに直結します。
熟睡感がもたらす身体的、精神的な充足が、その日のパフォーマンスや精神力に影響を与えますのでね。
また、睡眠の質こそが脳機能と免疫システムの円滑な働きに重要であり、健康維持の決め手となります。
これまでの睡眠シリーズで、睡眠の時間と質の不足は、仕事上の成果であれ家事であれ、つねに生産性の低下を伴いますし、健康にとってもマイナスでしかないことはお話してきたので御理解いただけてるかと思います。
「睡眠効率」を計算してみよう
感覚的に質の高い睡眠をとれたかどうかは御自身で判断できるかと思いますが、自身の感覚によるものなので少し曖昧ですよね。
ですので、質の高い睡眠を数値化してみましょう。
それが、「睡眠効率」というものになります。
一般的な人が目指すべき睡眠効率の合格ラインは、「85%以上」と言われています。
睡眠効率の計算方法は、「実際の睡眠時間÷ベッドにいた時間×100」です。
この数値が「85%以上」であれば合格ということになりますね。
時間を測るのも、計算するのも面倒くさいという人もいるかと思いますので、そのような人のための簡易版もあるみたいです。
判断するポイントは以下の3つになります。
➀ 1時間以内で入眠できたか
➁ 起床後30分以内で活動を始められたか
➂ 中途覚醒があっても数分で再入眠できたか
この①から③がすべてイエスならば、睡眠効率85%をクリアできていると判断していいようです。
その他にも「良質な睡眠」のサインはあるみたいですので紹介します。
・眠りに落ちるまでの時間が30分以内
・夜中に起きるのは1回まで
・夜中に目が覚めた場合は20分以内に再び眠ることができる
・総睡眠時間の85%以上を寝床で使っている(昼寝や通勤電車内での居眠りなどの合計が15%を超えない)
これらを満たしていれば、良質な睡眠だと判断できるみたいですよ。
睡眠のスイッチを入れる
ここで、睡眠のクオリティを上げる2つの脳スイッチに関して紹介します。
①「モノトナス」の法則
モノトナス(単調な状態)にすることは、眠るための脳のスイッチとなります。
退屈は普段あまり歓迎されませんが、睡眠にとっては良き友になりますので。
②「1/fゆらぎ」を取り入れる
私たちの体のリズムの多くは、もともと「1/fゆらぎ」を心地いいと感じるようになっています。
「1/fゆらぎ」とは、自然界にある「ゆらぎ」の一種なのですが、脳に直接影響を及ぼし、心を落ち着かせてくれる効果があると言われています。
代表例としてあげられるのが、モーツァルトの音楽ですね。
川のせせらぎ、小鳥のさえずり、虫の羽音などの典型的な自然の音楽も1/fゆらぎですので、是非是非取り入れてみてください。
ここまで睡眠の質に関してお話してきましたが、最終的には、一人一人が良い睡眠のとり方を身につけることが大事になってくるかと。
ベッドに入る30分前くらいの時間帯は、質の高い眠りにとって非常に重要と言われております。
ですので、静かで暗く居心地の良い寝室を作り出す努力を惜しまないようにしましょう。
「いつもと違う」睡眠時間対策
平日、休日にかかわらず、毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きるのがやはりベストみたいです。
ですが、飲み会があったり、楽しみにしていたドラマがあったりと、睡眠を侵食してくる要素は周りにたくさんありますので、なかなか「いつもの時間で」というのは難しいこともあるかと思います。
そのような人は、睡眠を一日で考えるのではなく、週単位、月単位でバランスを保つようにすることがポイントになると。
ある一日の睡眠がダメだったからと言ってすべて終わりとは考えずに、その週、その月でバランスをとれるように調整していくことが大事になってきます。
では、どうしても睡眠時間を減らさなければいけない時はどうしたいいのでしょうか。
例えば、試験前日で睡眠時間を削ってでも勉強しなくてはいけない場合など。
そういう場合は、「いつもどおりの時間に寝て、睡眠時間を1時間削る」ほうが、すんなり眠れて質が確保できる可能性が高いんだとか。
時間が足りないとなったら普段どおりの時間に眠り始め、早く起きるようにしましょう。
海外出張などで時差ボケを少しでも和らげようとしていつもより早めに寝たい場合などはどのように対策すればいいでしょうか。
基本的に、就寝時間の前倒しは困難とのこと。
後ろにずらすのは簡単ですが、前にずらすのは困難みたいなのです。
1日で楽にずらせる時間は1時間程度とも。
ですので、直前で帳尻を合わせるのではなく、徐々に就寝時間をずらしていくのが最適だということになりますね。
もし1時間早めに寝たいなら、いつもより1時間早くお風呂に入って、ストレッチなど軽い運動を組み合わせて体温を作為的に上げるという方法もいいかもしれませんね。
パートナーとの相性も睡眠の質を左右する?
パートナーとの相性も睡眠の質に関係するみたいです。
「レスポンシブルパートナー」がいる人ほど、夜ぐっすり眠れていることが判明したとのこと。
「レスポンシブルパートナー」とは、相手の感情を敏感に察し、相手の感情面を支えてくれるパートナーです。
レスポンシブルなパートナーがいる人は、自分の“味方”がいるという安心感から不安レベルが非常に低く、ストレスへの耐性も高い傾向にあることがわかっています。
ストレスを減らしてくれる人間関係も、睡眠の質を左右する大きなポイントになるわけですね。
認知改善で脳を騙そう!
自分が眠れているっていう思い込みが、実は睡眠の質をめちゃくちゃ上げるみたいなのです。
ここで面白い実験を1つ。
「質の高い睡眠がとれたという結果が出た」と聞かされた被験者は、実際の睡眠の質など関係なく、「自分はよく眠れたんだ」と思い込んでパフォーマンスも上がったんだとか。
実際に「自分はよく寝ている方だろう」と思っている人は、どれだけ睡眠時間が足りなくても、そのことによる日中の疲労やパフォーマンスの低下が少ないこともわかっております。
「全然眠れない」と悩んでいる人も、「でも、実はオレ、結構寝ているのかも」と思うだけでしっかり眠れるようになる、眠りが深くなる可能性もあるわけです。
思い込みも大事なのですね。
また、実はよく眠れていないのに自分の睡眠に不満がない人は、睡眠の質が高く睡眠に不満のない人と同様に、不安やうつの発症リスクが低かったという報告もあります。
寝つきが悪い人が認知を改善した場合、その効果は一般的な睡眠薬と変わらないとも言われていたりもするので、脳を騙してみるのはお金もかかりませんし、いい方法かもしれませんね。
忙しい人こそ眠り始めの4時間にこだわる
どうしても睡眠時間が短くなってしまうという人は、「眠り始めの4時間」を大事にした方がいいみたいです。
「眠りについてから4時間以内に、深睡眠がとれたかどうか」が重要になってくると。
寝ついてからの4時間で深睡眠がとれていない場合には、いくら睡眠時間が長くても心身の疲労が取れず、目覚めもスッキリとしたものにならないと。
もっとも深睡眠をとりやすいのは、実は「最初」と「2番目」のノンレム睡眠と言われております。
睡眠周期の最初に訪れるノンレム睡眠で、どれだけ深く眠れるかに全力を傾けるべきだということですね。
成長ホルモンが多く分泌されるのも、この眠り始めの4時間になります。
この時間だけでも睡眠を確保することで、心身の健康を維持する最低限の睡眠を確保することは可能だと考えられています。
参考にしてみてください。
【まとめ】
・一般的な人が目指すべき睡眠効率の合格ラインは、「85%以上」
・睡眠のクオリティを上げる2つの脳スイッチ
①「モノトナス」の法則
②「1/fゆらぎ」を取り入れる
・「レスポンシブルパートナー」がいる人ほど、夜ぐっすり眠れていることが判明
・「自分はよく寝ている方だろう」と思っている人は、どれだけ睡眠時間が足りなくても、そのことによる日中の疲労やパフォーマンスの低下が少ない
・自分の睡眠に不満がない人は、睡眠の質が高く睡眠に不満のない人と同様に、不安やうつの発症リスクが低かった
・「眠りについてから4時間以内に、深睡眠がとれたかどうか」が重要
;寝ついてからの4時間で深睡眠がとれていない場合には、いくら睡眠時間が長くても心身の疲労が取れず、目覚めもスッキリとしたものにならない
【クイズ】
Q1:一般的な人が目指すべき睡眠効率の合格ラインは以下のうちどれか。
①70% ②85% ③100%
Q2:睡眠の質を上げる方法として誤っているものは以下のうちどれか。
①モノトナスの法則 ②羊の数を数える ③1/fゆらぎを取り入れる
Q3:眠りについてからの何時間が重要か。
①1時間 ②2時間 ③4時間
回答
Q1の正解:②
一般的な人が目指すべき睡眠効率の合格ラインは、「85%以上」ですね
睡眠効率の計算方法は、「実際の睡眠時間÷ベッドにいた時間×100」です
Q2の正解:②
日本語で羊の数を数えると逆に眠れなくなってしまうという報告もあります
数える場合は英語のsheepを使いましょう
Q3の正解:③
「眠りについてから4時間以内に、深睡眠がとれたかどうか」が重要です
寝ついてからの4時間で深睡眠がとれていない場合には、いくら睡眠時間が長くても心身の疲労が取れず、目覚めもスッキリとしたものにならないと言われています
今回は、「睡眠の質」をみてきました。
次回は、そんな睡眠の質を上げるためのアプローチ法を紹介させていただければと思います。
『健康情報を手に入れて、今日も健やかに楽しく過ごしていきましょ~。ではまた。』
参考文献
『よく眠るための科学が教える10の秘密』リチャード・ワイズマン著
『スタンフォード式 最高の睡眠』西野 精治著
『賢者の睡眠 超速で脳の疲れを取る』メンタリストDaiGo著
『一流の睡眠』裴 英洙著
『睡眠こそ最強の解決策である』マシュー・ウォーカー著
『世界の最新論文と450年企業経営者による実践でついにわかった 最強の睡眠』西川 ユカコ著
『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』ショーン・スティーブンソン著
『最高の体調』鈴木 祐著
『ぐっすり眠る習慣』白濱 龍太郎著
『世界最高のスリープコーチが教える 究極の睡眠術』ニック・リトルヘイルズ著
『Sleep,Sleep,Sleep』クリスティアン・ベンディクト著 ミンナ・トゥーンベリエル著
『最高のリターンをもたらす超・睡眠術 30のアクションで眠りの質を高める』西野 精治著 木田 哲生著
『不老長寿メソッド 死ぬまで若いは武器になる』鈴木 祐著
『眠る投資 ハーバードが教える世界最高の睡眠法』田中奏多著
『熟睡者』クリスティアン・ベンディクト著 ミンナ・トゥーンベリエル著
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