運動の効用-後半-

運動

今回も、『運動の効用』に関してみていきたいと思います。

今回は後半になります。

≪運動の効用≫

もう一度、運動の効用をお示ししておきます。

運動が健康にもたらす効用としては以下のものが挙げられます

・心血管系を強くする

・免疫系を強化する;がんの最も明らかな危険因子は、運動不足

・骨を強くする

・肥満を防ぐ

・ストレスの閾値を上げる

・社交的になれる

・集団的な喜びを得られる

・不安が軽減する

・困難を乗り越える力がつく

・脳機能の向上;ニューロンの可塑性を高める

・脳疲労を減らす

・記憶力up

・学力up

・創造力up

・集中力を高める

・意欲を高める

・人生の満足度が高まる

≪脳機能の向上≫

運動で脳は「物理的」に変えられる

身体を活発に動かした人の脳は機能が向上し、加齢による悪影響が抑制され、むしろ脳が若返ります。

機能的にすぐれた脳とは、細胞がたくさんある脳でも、細胞同士がたくさんつながっている脳でもなく、各領域(たとえば前頭葉や頭頂葉)がしっかりと連携している脳になります。

身体を活発に動かせばその連携を強化できますので、やはり運動は大事ということです。

身体を活発に動かすことほどに脳を変えられる、つまり神経回路に変化を与えられるものはないと。

しかも、これは20分から30分ほどでも充分に効果があるとのこと。

最強の脳物質「BDNF」を分泌する

運動が脳に効くメカニズムでいちばん有力だと言われているのはBDNF(Brain-Derived Neurotrophic Factor:脳由来神経栄養因子)というニューロンの栄養物質です。

この脳内物質は、ニューロンの成長を促すと同時に、それらを結びつけるシナプスをつくったりメンテナンスをしてくれる働きをもちます。

BDNFを増やせるごく自然な方法、それが「運動」になります。

BDNFの生成を促すのに、運動ほど効果的なものはないのですね。

運動の種類によってBDNFの増加量はもちろん、容積が上がる脳部位も異なると。

どういう運動をするかによって、鍛えられる脳の働きも異なってくる可能性があるということですね。

実際の増加量として、

・高い運動負荷のインターバル・トレーニング(HIIT)は、継続的な運動に比べるとBDNF増加量が多い

・筋トレよりも有酸素運動のほうが、BDNF増加への効果は優れている

と、言われています。

ここで、BDNFの仕事をみてみましょう。

・脳細胞を守る

・新たに生まれた細胞を助け、初期段階にある細胞の生存や成長を促す役目

・脳の細胞間のつながりを強化し、学習や記憶の力を高めている

・脳の可塑性を促して細胞の老化を遅らせる働き

「至高の脳機能」を引き出すフィジカルフィットネス

作業記憶への影響がとくに優れているのが筋トレです。

脳の遂行機能を高めるうえで、科学的にいちばん繰り返し確立されている運動は、有酸素運動と筋トレになります。

コーディネーション運動(凝った縄跳びやボール投げなど、バランス、位置感覚、左右など身体の調整力が試される複雑な運動)は、有酸素運動や筋トレを上回るぐらい遂行機能に効果的と言われています。

現時点で脳に最もいいと言える運動

①1回あたり30分前後を目指す

②中等度以上(女性は軽度でも)

③週2回を目指す(週1回なら45分を目指す)

④4週間以上継続する

⑤鍛えたい脳の働きによっては短い運動でもいい

健康な頭脳が「健康寿命」を長くする

毎日、意識的に歩くと認知症の発症率を40%減らせるといいます。

認知症の一番の薬は、「歩くこと」なんですね。

ウォーキングか軽いジョギングを週にトータルで150分、あるいは30分ずつ週に5回行うのが望ましいとのこと。

20分のランニングを週に3回行っても、同じく効果があるみたいです。

他にも、しっかりと運動している人は、ガンのリスクを10-30%、心筋梗塞を20-30%、脳梗塞を10-20%、記憶低下を20-30%減らせると言われています。

日常の範囲で身体を動かすことが、病気を寄せ付けない秘訣になります。

≪脳疲労を減らせる≫

脳から「ストレス」を取り払う

ストレスによる疾患の治療と予防には、運動が目覚ましい効果をもたらすことが、研究によって立証されています。

ストレスが多ければ多いほど、脳をスムーズに活動させるには体を動かす必要がありますね。

海馬はストレス反応を抑制することで、ストレス反応を引き起こす扁桃体の働きを相殺しています。

なんと、海馬の細胞は過度のコルチゾールにさらされると死んでしまうんだとか。

海馬のためにも、運動しなきゃですね。

ちなみに、海馬と前頭葉は、ともに身体を活発に動かすことで何より恩恵を受ける部位といわれています。

前頭葉も、ストレスによって萎縮するといわれていますからね。

運動でストレス物質「コルチゾール」をコントロール

定期的に運動を続けていると、運動以外のことが原因のストレスを抱えているときでも、コルチゾールの分泌量はわずかしか上がらなくなっていくんだとか。

つまり、身体を活発に動かしたことでストレスに対する抵抗力が高まるということですね。

筋肉が、機能障害を誘発するストレス物質を取り除く処理工場として働いてくれるわけですね。

賢くストレス・不安を解消する

運動を習慣づければ、脳のブレーキペダルが強化され、「闘争か逃走か」モードに入りにくくなります。

運動をすると、脳のブレーキペダルが強化されて前頭葉と海馬が扁桃体の興奮を鎮め、それによって不安は抑制されるという流れになります。

このように運動によってストレスにうまく対処できるようになればコルチゾールの血中濃度は下がり、やがては食欲が収まって、蓄積された脂肪も減り、そのいっぽうでカロリーの燃焼量は増えていくという好循環に入ります。

ストレスだけでなく、体脂肪も減らせちゃうわけですね。

もしストレスの緩和が目的なら、筋力トレーニングよりも有酸素運動のトレーニングのほうが効果あるみたいですよ。

脳疲労に効くサプリメント

脳疲労に効くと言われているサプリメントも簡単に紹介しておきます。

・カフェイン;運動のパフォーマンスを上昇させたり、最大筋力を増強させたりするほか、もうダメだ感を減らしてくれます

・ベータアラニン;アシドーシスを減らします

・ビートジュース;運動効率とパワーをアップさせ、疲労感を遅らせ、運動後の筋肉疲労を減らします

是非、参考までに。

≪記憶力up≫

脳細胞の復活劇

新生を妨げず、むしろ加速させる方法こそが「運動」です。

身体を活発に動かせば、なんと脳細胞の新生は2倍に増えるんだとか。

運動やトレーニングによって脳細胞の新生が促され、刺激的な環境がその細胞の生存を促すわけです。

とくに海馬が身体を動かすことによって恩恵を得る部位のひとつといわれています。

運動によって海馬の細胞新生を促すことができます。

運動ほど脳細胞の新生を促せるものはないといっても過言ではありません。

運動、セックス、(栄養不良にならない程度の)低カロリーの食事、プレーンチョコレートなどに含まれる「フラボノイド」はすべて、脳細胞の新生を促す効果があるんだとか。

新しい細胞は、ストレスや睡眠不足、過度の飲酒、高脂肪の食事、とくにバターやチーズに含まれる飽和脂肪酸の取りすぎによって減少すると言われていますので、このあたりは気をつけたいところですね。

運動以上に記憶力を高められるものはない

週に数回ほど早足で歩いたり走ったりするだけで脳の老化が食い止められ、むしろ若返り、おまけに記憶力まで強化できると。

しかも、週に3回、40分、早足で歩くだけでいいみたいです。

もし記憶力を最大限に上げたいのであれば、運動と暗記を同時に行うのがオススメ。

運動によって海馬でBDNFが増えることで、短期記憶は長期記憶の貯蔵に転送されやすくなるわけです。

運動の影響は、何かを習得してから1日後に現れるとも言われていますので、焦りも禁物ですね。

ただし、脳が恩恵を受ける運動量には限度があると言われていますし、疲労を覚えるほど運動すると、かえって逆効果になるとのことですので、適量でお願いします。

記憶力がupする筋トレ法

何かを覚えようとするときは、一緒に筋トレをするという選択肢もいいみたいです。

勉強の前に腕立て伏せやスクワットなどを行うと、1.5倍も記憶が残りやすくなります。

≪学力up≫

学力と運動の絶対的な関係

子どもでも身体を鍛えれば、脳の重要な部位である海馬が大きくなると言われています。

毎日たくさん歩いた子どもは、あまり歩かなかった子どもに比べてストレスを感じにくく、精神状態も安定していたとの報告もあります。

子どもが潜在的な能力を存分に発揮するには、身体を活発に動かさなくてはならないと言われていますので、可能なら外でいっぱい遊んで欲しいところですね。

小学校に通う学童期が最も運動の恩恵を得られるとのことですので、この期間くらいは外で遊ばせるように仕向けてみてはいかかでしょうか。

また、学校でも職場でも、立って作業をすると脳が効率よく働くと言われておりますので、もし可能であれば、スタンディングデスクなどを導入すると良いかもしれませんね。

僕も可能な時間は立って仕事をするように心掛けています。

IQを高める

脳に効果を及ぼすには、何よりも心拍数を上げることが重要です。

ポイントは「心拍数を増やすこと」なんです。

脈拍を1分間に150回前後まで上げることを目安にするといいみたいです。

大人と同様、重要な点は子どもたちが何をして身体を動かすかではなく、とにかく身体を動かすことです。

こんな運動をしよう

最大心拍数の60-70%を保って35分間ランニングマシンで走っただけで、認識の柔軟性が向上すると。

有酸素運動が神経伝達物質を増やし、成長因子を送り込む新しい血管を作り、新しい細胞を生み出す一方で、複雑な動きはネットワークを強く広くして、それらをうまく使えるようにしてくれるわけですね。

≪創造力up≫

アイデアが歩き出す

身体にある程度の負荷がかかる活動のほうが、創造性においても効果が高いと。

アイデアをたくさん思いついた人ほど、すぐれたアイデアもたくさん思いつく傾向があるみたいです。

正しく意図して創造性を上げるには、脳内のあらゆる部位にアプローチできる「運動」が最適と言われています。

運動やトレーニングをすると、アイデアを活かす力が高まるだけでなく、アイデアそのものがあふれ出るようになります。

≪集中力が上がる≫

「集中力」を取り戻せ!

運動によって選択的注意力と集中力が改善することがわかっています。

感覚中枢から伝えられた雑音のボリュームを下げ、目の前のことに集中するためには「ドーパミン」が必要です。

このドーパミンは単に「報酬の脳内物質」であるだけでなく、非常に重要な役割を果たす、集中力を保つためには絶対に欠かせない物質なのです。

薬に頼らずにドーパミンの分泌量を増やす方法、それが身体を動かすことです。

身体に与える負荷が多いほど、ドーパミンの分泌量も増えると。

ドーパミンの量を増やすには、ウォーキングよりもランニングのほうが適しているということになりますね。

これは、集中力の違いは遺伝子や環境ではなく、生活習慣によることを示唆しています。

身体を動かせば脳の機能が変わり、脳本来のメカニズムが活性化することで集中力が高めることができるわけです。

≪意欲が高まる≫

『うつ病の治療法』としての運動

運動が脳の報酬系におよぼす影響は、ほぼ確実に抗うつ作用につながっています。

成人の場合は10年ごとに、報酬系のドーパミン受容体が13%も減少するそう。

そのため日常の喜びを感じにくくなりますが、運動にはこの減少を防ぐ効果があると。

また、気分の落ち込みは運動で12%予防できると言われ、週に最低1時間でも効果があるんだとか。

運動は、副作用が一切ない薬みたいなもの。

少しだけ気持ちが滅入っている人でも、深い苦悩を抱えている人でも、たいていは運動をすれば晴れやかな気分になれますからね。

それだけでなく、運動をすれば誰でも気持ちが晴れ、悲観的な考えが浮かばなくなり、自尊心も高まります。

つまり、運動は治療としてより予防としての方がはるかに重要だということです。

年とともに体が変化しても、運動は心を強くし、鍛えつづけてくれるので、ありがたい限りですね。

≪人生の満足度が高まる≫

運動で「人生の満足度」が高まる

運動をすることで、人生の満足度が上がるみたいです。

実際に体をよく動かす人たちのほうが、幸福感や人生に対する満足度が高いと言われています。

また、定期的に運動している人たちは、目的意識が強く、日常生活において感謝や愛情や希望を実感することが多いともいわれています。

運動を定期的に行った人は幸福感が増すうえ、わずかですが性格も変わるなんて報告も。

他にも、日常生活の身体活動レベルは、人生の目的意識と相関関係にあることがわかっています。

人びとは座りっぱなしでいるよりも、活発に動いているほうが気分がよくなることや、ふだんよりも活動的に過ごした日のほうが、人生の満足度が高くなるんですね。

重要なのは、運動がもたらす心理的・社会的な効果は、身体能力や健康状態とは関係ないということです。

人生に満足できていない人は、とりあえず運動してみましょう。

【まとめ】

・運動で「脳機能が向上する」

・運動で「脳疲労を減らせる」

・運動で「記憶力up」

・運動で「学力up」

・重要な点は何をして身体を動かすかではなく、とにかく身体を動かすこと

・運動で「創造力up」

・運動で「集中力が高まる」

・運動で「意欲が高まる」

・気分の落ち込みは運動で12%予防できると言われ、週に最低1時間でも効果がある

・運動で「人生の満足度が高まる」

【クイズ】

Q1:学力がupするのは勉強したときであり、運動は関与しない。〇か×か。

Q2:運動で意欲は高まる。〇か×か。

Q3:運動が人生の満足度に影響を及ぼすことはない。〇か×か。

回答

Q1の正解:×

 運動で学力はupします

 ここで重要な点は何をして身体を動かすかではなく、とにかく身体を動かすことです

Q2の正解:〇

 運動で意欲は高まります

気分の落ち込みに関しても運動で12%予防できると言われており、週に最低1時間でも効果があります

Q3の正解:×

 運動で人生の満足度が高まります

今回は、『運動の効用』の後半戦を紹介させていただきました。

次回は、運動する際の場所やタイミングに関してみていきたいと思います。

次回もよろしくお願いします。

『健康情報を手に入れて、今日も健やかに楽しく過ごしていきましょ~。ではまた。』

【参考文献】

『最高のパフォーマンスを実現する超健康法』メンタリストDaiGo著

『不老長寿メソッド 死ぬまで若いは武器になる』鈴木 祐著

『スタンフォード式 人生を変える運動の科学』ケリー・マクゴニガル著

『脳を最大限に活かす究極の運動法』久賀谷 亮著

『運動脳』アンデシュ・ハンセン著

『脳を鍛えるには運動しかない!最新科学でわかった脳細胞の増やし方』ジョンJ・レイティ/エリック・ヘイガーマン著

『医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本』中野ジェームズ修一著

『一生リバウンドしないパレオダイエットの教科書』鈴木 祐著

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