前回は、「ストレスに関連した食事」をお話させていただきました。
今回は『脳力アップにつながる食材』に関してみていこうと思います。
【脳力向上が期待できる食材】
自分で起こせる脳内の変化はすべて、食べたもので決まると言っても過言ではございません。
賢く食材を選び、脳力を上げていきましょう。
《脳の回転を遅くする食生活習慣》
「脳力向上が期待できる食材」とか言っておきながら、いきなり悪い食習慣を取り上げてしまいすいません。
御容赦ください。
脳に悪い食生活を送っていると、頭の回転が遅くなるだけでなく、やる気がなくなったり、ネガティブな感情が芽生えたりと大変な状況が引き起こされます。
なんといっても「トランス脂肪酸」は外せないですね。
揚げ物には、脳に悪い影響を与えるトランス脂肪酸が含まれています。
このトランス脂肪酸は、食品から摂取する必要がないと考えられており、心臓病のリスクなど、日常的に多く摂りすぎた場合の健康への悪影響が知られているものになります。
トランス脂肪酸は、脳の血流を悪い状態にしてしまうだけではなく、脳の中にかろうじて残っているオメガ3脂肪酸をオメガ6脂肪酸に変えてしまう作用もあります。
脳と糖の悩ましい関係
また、糖質の摂り方にも注意が必要です。
糖の過剰摂取とインスリン抵抗性はアルツハイマー病と強い関連性があり、この関連性を「3型糖尿病」という名称で示唆する提案が科学者からあがり始めているほど。
糖の過剰摂取は、脳に壊滅的な影響を及ぼすことは周知の事実。
過剰な糖の影響を主に受けるのは、側坐核と呼ばれる脳領域になります。
糖はコカインなどのドラッグと同じで、側坐核にドーパミンの分泌を急激に促します。
大量の糖の摂取を続けていくと、次第にドーパミンの信号が弱くなっていくため、「同じ効果を得るためには摂取量を増やすしかなく、(糖の摂取量を)減らせば離脱症状が出る」という状況に陥ってしまいます。
甘味の罠にご用心
糖の過剰摂取は記憶や学習といった認知能力の障害と関連性があります。
また、糖の過剰摂取は目覚めや覚醒、食欲を調節する神経ペプチドの機能不全を招くこともわかっています。
痩せすぎも太り過ぎも脳にとってはマイナス。
脳の構造脂肪はかなり安定性が高いとはいえ、栄養不良や低体重状態になれば、脳のサイズが大幅に縮小する恐れがあるといいます。
同様に、ウエストのサイズが大きくなっても、脳の大きさは小さくなる傾向があると。
具体的には、灰白質が大幅に縮むことがわかっています。
血糖値の急上昇は身体によくないことは以前のブログでも書かせていただきました。
ですので、同じ炭水化物などを摂取するとしても、低GI食品を食べるのがオススメになります。
《脳を健康に保つ食材》
悪い習慣を認識したところで、今度こそ脳力アップをもたらす食材をみていきましょう。
脳の60%は脂肪でできているため、脳に良い食材はオメガ3脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)を多く含んだ食材となります。
ですので、「脳には魚が良い」と覚えておきましょう。
オメガ3脂肪酸は、脳の原料になり、血行を良くし、新しい神経細胞が生まれやすい環境を作ってくれます。
オメガ3脂肪酸のDHAはセロトニンの生成を促す作用があります。
DHAはほかにも、新しい脳細胞の生成にも関わっています。
健康な人の食事で摂取するDHAレベルが増えると、記憶力と反応速度の両方が改善することがわかっています。
また、EPAは、脳の血管を良い状態にしてくれるため、血流が良くなり、脳の血管も詰まりづらくなります。
オメガ3脂肪酸をたくさん摂取すると、新しい脳細胞が生まれることでボケにくく、おまけに記憶力も向上し、集中力や活力もアップします。
オメガ3はBBBを通過して認知能力をサポートする数少ない脂肪なのです。
食べるべき魚のトップ4として、サケ、サバ、ニシン、イワシがあります。
ちなみにキャビア、イクラなどもいい食材です。
焼き魚を週に1回食べるだけで海馬などの脳の記憶を司る部分が4.3%も大きくなり、また、認知機能を司る部分は14%も大きくなったとの報告があります。
お刺身やなるべく低温で調理されたオメガ3脂肪酸が多く含まれている青魚を週に一度でも定期的に食べたほうが脳には効果的です。
是非ともお魚は積極的に摂っていただきたいですね。
他にも、グラスフェッドビーフ、放牧で育った家畜の卵の黄身、魚のマスも、脳のためになるオメガ3の供給源です。
ちなみにオメガ3脂肪酸は筋トレの効果も上げてくれます。
ですので、筋トレをする人は特に魚を食べることをオススメします。
魚以外では、亜麻仁油(ヌメゴマ)、クルミ、ヒマワリの種、アーモンドなどがオススメになります。
脳の機能を高める「脂肪」
オメガ3脂肪酸の話をさせていただきましたので、ここでその他の優秀な「脂肪」に関して紹介させていただきます。
[リン脂質]
リン脂質の興味深い特徴というと、何といっても細胞のコミュニケーションへの貢献です。
リン脂質にはストレス下で思考力を支えるという魅力的な側面もあります。
魚、蟹、イクラ、オキアミ、大豆、ミルク、オーツ麦、ヒマワリのタネはいずれも優れた供給源です。
リン脂質の成分であるホスファチジルセリンが豊富な食品には、タイセイヨウサバ(通称ノルウェーサバ)、カツオ、鶏レバー、鶏のハツ、ターキー、牛肉、白インゲン豆、大豆レシチンなどがあります。
リン脂質の材料になるコリンという物質は、生涯にわたって記憶力を発達させてくれる重要な栄養素のひとつになります。
コリンがもっとも豊富な食べ物というと牛のレバーですが、鶏のレバー、タラ、エビ、卵、植物性食品ではブロッコリー、芽キャベツ、カリフラワーにも含まれています。
[MCT]
MCTの摂取は、軽度から中等度のアルツハイマー病患者の認知機能や認知的機能不全の改善に直接的に関係することがわかっています。
MCTは、BBBを通過でき、かつケトン体を産生できることから、MCTは直接的にも間接的にも、脳のエネルギー源にもなりうるものです。
MCTを豊富に含む食品は、ココナッツオイルや乳製品(牛乳やヤギの乳など)などがあります。
[エクストラバージンオリーブオイル(EVOO)]
EVOOにはBBBの健康状態を改善する効能が複数あります。
EVOOは神経炎症を軽減に導き、AMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)と呼ばれる有力な代謝タンパク質の活動を促進し、脳内のオートファジーのプロセスを改善します。
AMPKはBBBの通過にかかわるグルコースの運搬状況を改善し、神経細胞に運ぶ量を増やすことができる数少ない化合物です。
AMPKにはオートファジーも促す作用があります。
私たちの身体には、損傷した細胞を一掃して「空間」をつくり、新しい健康な細胞を再生する仕組みが備わっています。
優れた記憶力を保持するには、いいものを取り込むだけでなく、あまりよくないものを排除することも大切になります。
EVOOに含まれる1価不飽和脂肪を十分に摂取すると、加齢に伴う脳内におけるミトコンドリアDNAの減少を防ぐ一助になります。
EVOOを毎日大さじ2-3杯摂取すれば、脳を守ってくれる上質な1価不飽和脂肪は十分に摂れます。
《脳細胞の健康をサポートする食品や飲料》
- きゅうり
きゅうりには隠れた栄養素が豊富に含まれており、メンタル面に対し非常に良い影響を与えます。
- ニンジン
ニンジンにはβカロチンが豊富に含まれており、肌の血色を良くしてくれる効果があります。
- ほうれん草
葉物野菜の摂取は脳を活性化する要因として明らかに際立っています。
ほうれん草やケール、各種レタスなどの葉物野菜を、1日に2食分摂ることを目指すといいです。
- ブロッコリー
筋トレに効果があり、体の抗酸化力を高める効果があると言われているスルフォラファンが豊富に含まれています。
スルフォラファンは水溶性で水にさらすと溶け出してしまうため注意が必要です。
また、揮発性でもあるため食べずに放置していたり、茹でたりすると成分が失われてしまうので、その点に関しても注意が必要です。
ですので、ブロッコリーは生で食べることを基本としましょう。
ブロッコリーについてもっとも貴重な情報というと、脂溶性のビタミンKが豊富である点です。
脂溶性ビタミンは、「スフィンゴ脂質」と呼ばれる脳内の構造脂肪の合成に欠かせない要素になります。
ビタミンKとスフィンゴ脂質の相互作用は、認知機能において非常に大きな役割を担っています。
ビタミンKを十分に摂取すると、エピソード記憶が改善します。
ブロッコリーに含まれる「イソチオシアネート」は、脳の炎症を抑制し、神経変性疾患を予防する効果をもたらします。
- ニンニク
ニンニクは記憶と学習のスピードを向上させうる食材です。
- 豆類
豆類の中でもオススメなのが発酵食品です。
- 玄米
太りたくない人は、糖質だからと敬遠せず、むしろ夜に食べることがオススメです。
夜に糖質を摂ることで睡眠の質が上がることは以前お話したとおりです。
- キノコ
食用キノコを食べると記憶力が改善し、加齢に伴って認知力が低下するリスクを50%まで下げる可能性があります。
週に2-4回キノコを食事に取り入れるようにすれば、記憶の問題を抱えるリスクが大幅に低下します。
- ヤマブシタケ
ヤマブシタケに含まれる化合物は、脳のNGF(神経成長因子)の活動を大幅に向上させることができます。
- サーモン
タンパク質のバランスも非常に優れており、メインのタンパク質源にしてもいいくらいの食材です。
- トウモロコシ
食物繊維が豊富なのと、小腹が空いたときや糖質を摂取するときにも役立ちます。
- リンゴ
人間の脳の中毒症状を改善してくれるとても優秀な食べ物です。
- バナナ
甘さはあるが、食物繊維も豊富で、かつ体に必要な栄養素もたくさん含まれています。
- イチゴ
1日に100gを目安に食べるだけで、アンチエイジングの効果が高く、食物繊維を摂取でき、栄養も摂れます。
- ブラックベリー
ブラックベリーに含まれるポリフェノールには、加齢に伴う認知能力の低下を遅らせる、場合によっては打ち消す効果が期待できます。
- チョコレート
上質なチョコレートを毎日約9グラム以上食べると、加齢に伴う記憶力の低下から脳を守る効果が期待できます。
- 緑茶
緑茶に含まれるカフェインは、反応速度の向上、注意力の向上、精神的疲労の抑制を促す作用があります。
緑茶には「L-テアニン」と呼ばれる固有のアミノ酸が含まれます。
神経伝達物質のGABAの活動を活性化させます。
L-テアニンを摂取すると、α波が発生する頻度が増加することから、ストレスの抑制や集中力の強化に加え、創造性の向上までもたらされます。
1日2-4杯の緑茶が脳に最大の効果をもたらすことがわかっていますので、これを目安に緑茶を積極的に摂取しましょう。
- コーヒー
コーヒーを常習的に飲むと、認知の低下を防ぎ、アルツハイマー病やパーキンソン病を発症するリスクが抑制されます。
コーヒーを積極的に飲むと決めたなら、一日あたりの最適なカフェインの摂取量は50-250mgであることを忘れないでください。
- スピルリナ
スピルニナには①脳のニューロジェネシスを促進し、②神経炎症を抑制する効果が期待できます。
1日あたりティースプーン1杯のスピルリナを摂取すれば、脳に手厚い保険をかけるようなものですね。
《脳の衛生状態を保つ》
[ターメリック]
ターメリックに含まれる活性成分(クルクミン)にアミロイド斑の排除を助ける作用があるほか、神経細胞の老化を遅らせ、重金属を見つけ出し、脳内の炎症を抑制する力があります。
クルクミンについては、脳の免疫システムの最前線で働く在住マクロファージ細胞の機能を改善する力があります。
クルクミンには神経可塑性を改善し、新たな脳細胞の創出を促す力があります。
[クルミ]
クルミに含まれる化合物には、有害なアミロイドベータペプチドを脳から取り除く一助となります。
クルミには酸化ストレスや炎症を抑制し、脳細胞の早期の死滅を防ぐ力があります。
ひとつかみのクルミを毎日食べると、記憶力、集中力、脳の情報処理速度が高まります。
[シナモン]
シナモンに含まれるファイトニュートリエント(植物性栄養素)には、脳内に見受けられるタウタンパク質のもつれをほどく作用があります。
神経原線維のもつれは、アルツハイマー病の重要な指標のひとつとなります。
シナモンには、そもそももつれを起きづらくさせる作用があるほか、酸化ストレスを抑制し、神経細胞の状態全般を改善する効果も期待できます。
また、シナモンの海馬の可塑性を促進する作用により、学習課題を習得する速度が向上します。
摂取量は少々で十分なので、一日あたりティーンスプーン4分の1杯の摂取を目指しましょう。
《マグネシウム脳のなかでの働き》
忘れてはいけない栄養素に、「マグネシウム」があります。
ある研究で、成人(50-70歳)でもマグネシウムレベルを改善すると、脳年齢が9歳若返る可能性があることがわかっています。
【まとめ】
・「トランス脂肪酸」は避ける
・糖の過剰摂取とインスリン抵抗性はアルツハイマー病と強い関連性がある
・脳に良い食材はオメガ3脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)を多く含んだ食材
;「脳には魚が良い」
・脳の機能を高める「脂肪」
・オメガ3脂肪酸
・リン脂質
・MCT
・エクストラバージンオリーブオイル(EVOO)
・脳細胞の健康をサポートする食品や飲料
・きゅうり
・ニンジン
・ほうれん草
・ブロッコリー
・ニンニク
・豆類
・玄米
・キノコ
・ヤマブシタケ
・サーモン
・トウモロコシ
・リンゴ
・バナナ
・イチゴ
・ブラックベリー
・チョコレート
・緑茶
・コーヒー
・スピルリナ
・脳の衛生状態を保つ食材
;・ターメリック
・クルミ
・シナモン
・マグネシウムレベルを改善すると、脳年齢が9歳若返る可能性がある
【クイズ】
Q1:糖の過剰摂取とインスリン抵抗性はアルツハイマー病と強い関連性がある。〇か×か。
Q2:脳力をアップさせてくれる「アブラ」として誤っているのは以下のうちどれか。
①トランス脂肪酸 ②オリーブオイル ③オメガ3脂肪酸
Q3:脳力をアップさせてくれる飲み物として誤っているのは以下のうちどれか。
①コーヒー ②コーラ ③緑茶
回答
Q1の正解:〇
その通りですね
糖の過剰摂取とインスリン抵抗性はアルツハイマー病と強い関連性があり、この関連性を「3型糖尿病」という名称で示唆する提案が科学者からあがり始めているほどなんだそう
Q2の正解:①
「トランス脂肪酸」は避けるべきアブラですね
トランス脂肪酸は、食品から摂取する必要がないと考えられており、心臓病のリスクなど、日常的に多く摂りすぎた場合の健康への悪影響が知られております
Q3の正解:②
簡単すぎですね
糖分の過剰摂取には十分気をつけましょう
今回は、『脳力向上が期待できる食事』に関して簡単にまとめてみました。
次回は、『腸力向上が期待できる食事』を簡単にまとめてみようかと。
『健康情報を手に入れて、今日も健やかに楽しく過ごしていきましょ~。ではまた。』
【参考文献】
『食べる投資 ハーバードが教える世界最高の食事術』満尾 正著
『食欲人』デイヴィッド・ローベンハイマー著
スティーヴン・J・シンプソン著
『食事のせいで、死なないために』マイケル・グレガー/ジーン・ストーン著
『人生が変わる 神レシピ』メンタリストDaiGo/つっしー著
『一生リバウンドしないパレオダイエットの教科書』鈴木 祐著
『EAT-最高の脳と身体をつくる食事の技術』ショーン・スティーブンソン著
『死ぬまで若々しく健康に生きる老けない食事』スティーブン・R・ガンドリー著
『世界のエグゼクティブを変えた超一流の食事術』アイザック・H・ジョーンズ著
『細胞が生き返る 奇跡の「脂」食革命』ジョセフ・マーコーラ著
『DNA再起動 人生を変える最高の食事法』シャロン・モアレム著
『この病気にはこの野菜』斎藤 嘉美監修
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