『腎炎』と闘う食材

食事

前回は、「脂肪肝の改善が期待できる食材」をお話させていただきました。

今回と次回は、腎臓疾患を扱っていこうかと。

今回は『腎炎とネフローゼ症候群』に関してみていこうと思います。

【腎炎の改善が期待できる食材】

≪「腎炎」とは≫

急性腎炎は、風邪や扁桃炎などの感染症にかかったときなどに、腎臓の毛細血管が糸くず状に固まった糸球体が炎症を起こす病気です。

特に4-6歳くらいの子どもに発症、20歳未満の若年層にも多くみられますが、成人でもかかることがあり、そのうち1割程度は慢性腎炎に移行します。

慢性腎炎は顔や手足のむくみ、腰痛などが現れることがありますが、自覚症状はほとんどありません。

20-40歳代の働き盛りの男性がかかりやすい傾向があります。

症状がないからといって放置しておくと、最終的には腎臓の機能が著しく低下する腎不全を引き起こします。

急性腎炎は多くの場合、感染症が引き金となって発症するので、風邪や扁桃炎にかからないように日頃から健康管理をすることが予防につながります。

感染症は栄養の偏った食事やストレス、疲労などの積み重ねによって体の免疫力が低下するとかかりやすくなります。

≪「ネフローゼ症候群」とは≫

ネフローゼ症候群は病名ではなく、腎炎を含め、尿と一緒にタンパク質が排泄されてタンパク質不足となり、むくみが現れる病状全般を指します。

腎機能が低下すると、タンパク質が吸収されないまま老廃物と一緒に尿中に排泄されます。

さらに、タンパク尿が長く続くと、血液中のタンパク質が減少して栄養障害が起こります。

また、不要な塩分が排出されずに体内に残ってしまうので、高血圧やむくみも現れます。

合併症として脂質異常症があげられます。

ネフローゼ症候群は腎臓病による腎機能の低下が関連しているといわれ、腎炎など糸球体の病変によるものがほとんどですが、糖尿病など他の病気の合併症や症状として、腎臓が侵されることもあります。

≪腎疾患に関して≫

上記のような疾患などによって、腎臓が正常に機能しなくなると、代謝老廃物が血液中に蓄積し、虚弱、息切れ、錯乱、心拍リズムの異常などの症状につながってしまいます。

毒素や感染症や尿路閉塞などによって、突然、腎不全が起こる場合もありますが、ほとんどの腎臓病は、長いあいだに腎機能が徐々に失われるのが特徴です。

腎臓病を有する人の死因の中でも心血管疾患が断トツに多かったとの研究結果があります。

なぜなら、正常な心機能を維持するには、腎臓の働きがきわめて重要だからですね。

実際に、45歳未満で腎不全のある人たちは、腎機能が正常な人たちに比べて、心臓病で死亡するリスクが100倍も高くなってしまうとの研究結果もあるくらいです。

こんな恐ろしい腎臓病も食生活を見直すことで改善を期待することができます。

以前にもお話したとおり、未加工の菜食中心の食事は心臓によいだけでなく、加えて腎臓病の予防と治療にも、もっとも効果の高い方法なのです。

≪食事の基本≫

腎炎とネフローゼ症候群では、安静と食事療法が治療のポイントとなります。

病気の状態や進行によって食事の内容が大きく異なるため、医師の指示に従い、根気よく治療を続けることが大切です。

主に以下のように改善していきます。

➀塩分を控える

➁タンパク質を制限する

➂カロリーは確保する

➃水分を制限する

➄カリウムに注意する

➀の塩分は、急性腎炎やネフローゼ症候群でむくみ・腹水がみられるときは1日3-4g以内に制限し、回復期には6gくらいにします。

慢性腎炎では症状に応じて制限するようにします。

➁のタンパク質は、急性腎炎ではタンパク質の老廃物が腎臓にたまるのを抑えるため、体重1kgあたり0.5g以下、回復期では1gにします。

ネフローゼ症候群では、標準所要量(一日男性で70g、女性で60g程度)を超えないようにします。

タンパク尿が出た場合は高タンパク食にし、脂肪は減らします。

効率よく利用される良質なタンパク質(肉、魚介類、大豆製品など)を摂るようにすることが大切です。

慢性で腎機能の低下がみられないときは、極端に制限する必要はありません。

➂腎炎では1日2000キロカロリーを確保し、ネフローゼ症候群では肥満があればエネルギー制限をしますが、なければ体重1kg当たり35キロカロリーの高エネルギー食にします。

共にタンパク質の少ない糖質や脂質で摂るようにします。

ネフローゼ症候群の中で糖尿病性腎症によるものは1400-1800キロカロリーに制限します。

➃の水分は、むくみがあり、尿量の少ない腎炎の急性期には、前日の尿量+500ml程度にします。

汁物は避け、飲み水としてだけ摂取するようにします。

慢性でむくみのない場合は、水分制限の必要はありません。

ネフローゼ症候群でむくみが強く、尿量が少ないときは厳しく水分を制限するが、利尿剤が処方されているときは充分に水分をとるようにします。

➄尿量の少ない急性期にはカリウムの排泄も悪くなっているので、摂取を控えます。

ネフローゼ症候群では血中のカリウム量に問題がなければ制限する必要はありませんが、ステロイドや利尿剤を使っているときはカリウム不足に注意します。

腎疾患全般に有効な成分の代表は、EPA(エイコサペンタエン酸)です。

ハマチ・イワシ・サバ・ブリ・サンマなどの青背魚や、キンキ・マダイ・ウナギ・マグロのトロなど脂身の多い魚に多く含まれる不飽和脂肪酸で、腎臓の炎症を軽減する作用があります。

鮮度のよい魚を、できるだけ脂肪を逃さないように調理しましょう。

オススメは刺身ですが、汁ごと食べられる煮物やグラタンでもよいかと。

体内での酸化を防ぐため、β-カロテンやビタミンEの多い緑黄色野菜と一緒に食べると万全です。

魚に豊富なビタミンDは慢性腎臓病の予防・改善に効果があるようです。

急性腎炎における感染症予防のポイントは、タンパク質・糖質・脂質の三大栄養素に加え、ビタミン、ミネラルがバランスよく含まれた食事をしっかりとることです。

ネフローゼ症候群では脂質異常症を誘発しないよう、動物性脂肪を避けて植物油などを利用するようにしましょう。

腎臓病は高血圧や動脈硬化、糖尿病など生活習慣病との合併もあるので、生活習慣病を予防する食事も参考になると。

[腎不全を引き起こす食生活]

腎機能の低下に関連する3つの食事成分として、「動物性タンパク質」「動物性脂肪」「コレステロール」があげられます。

もちろん、砂糖とブドウ糖、果糖、コーンシロップの過剰摂取は、血圧と尿酸値の上昇につながり、どちらも腎臓に障害をもたらします。

また、動物性食品とジャンクフードに含まれる飽和脂肪、トランス脂肪、コレステロールも、腎機能不全につながります。

では、タンパク質はどうなのか。

上記では、動物性タンパク質があげられていますが、植物性タンパク質はどうなのでしょうか。

比較なども交えて、タンパク質に関して詳しくみていきましょう。

[動物性タンパク質の腎臓への影響]

食肉タンパク質は腎臓に対する酸の負荷を高め、アンモニア産生が増えるため、繊細な腎臓細胞に損傷が生じる恐れがあることがわかっています。

ですので、慢性腎疾患の患者には腎機能のさらなる低下を防ぐため、タンパク質の摂取制限が推奨されることが多いのですね。

では、植物性タンパク質はどうなのでしょうか。

2014年に行われた研究で、植物性タンパク質には、弱っている腎臓の機能回復を助ける働きのあることが明らかになりました。

では、植物性タンパク質を摂っても腎臓の負荷は増加しないのに、なぜ動物性タンパク質を摂ると腎臓の負荷が増加するのでしょうか。

それは、動物性食品が引き起こす炎症のせいと考えられています。

[食事性酸負荷を減らそう]

上記に加えて、動物性タンパク質が腎機能に害をおよぼすもうひとつの理由は、たくさんの酸を発生するからです。

動物性タンパク質に多く含まれる、メチオニンなどの含硫アミノ酸が体内で代謝されると、硫酸が産生されてしまいます。

このように、食事性酸負荷が高いほど、腎障害の指標である尿中へのタンパク質漏出のリスクが著しく高くなります。

そして、生じた酸により、「腎尿細管壊死」が起きて腎臓に影響が出てしまうわけです。

通常の状況では、腎臓は菜食によってアルカリ側に傾きますが、肉を食べると腎臓には酸負荷が生じてしまうわけです。

このようにして、酸を産生する食事を摂っていると、腎臓結石のリスクが高まるだけでなく、全身性および低悪性度の慢性代謝性アシドーシスを引き起こし、加齢にともない筋破壊につながる恐れがあります。

ここで、腎臓への酸負荷をもたらす食材TOP3をお伝えします。

1位:魚

2位:豚肉

3位:鶏肉

です。

魚なのは意外でしたが、このような順になると。

ここでの魚はツナなどの魚でしたので、上記の魚とは区別した方がよさそうですね。

なにごとも極端にならないように注意してくださいね。

逆に、アルカリ産生をもたらしてくれる食材TOP3もお伝えします。

1位:野菜

2位:果物

3位:豆類

です。

このあたりは順当な感じがしますよね。

[リンの過剰摂取を防ぐ]

ここで、リンに関してみていこうと思います。

血液中のリン濃度が高くなりすぎると、腎不全、心不全、心臓発作、早期死亡などのリスクが高くなり、かつ過剰なリンは血管にダメージを与え、老化や骨量の減少を早めることがわかっています。

実際に、血液中のリン濃度の上昇は、人びとの早死にを招く独立危険因子となっているほどです。

リンの中でも最も悪い種類のリンは、食品添加物のリン酸塩になります。

植物性食品のリンが血液中に吸収されるのは50%以下、動物性食品のリンでは約75%ですが、食品添加物のリン酸はほぼ100%血液中に吸収されてしまいます。

食品添加物には要注意ですね。

菜食中心の食事に切り替えると、リンの摂取量じたいは変わらなくても、血液中のリン濃度は大幅に下がります。

なぜなら、動物性食品に含まれるリンに比べて、植物性食品に含まれるリンは、体に吸収されにくいからですね。

≪効果が期待できる野菜類≫

[グリシニンの豊富なもの]

大豆や大豆加工品に含まれるタンパク質で、中性脂肪やコレステロールを低下させるため、ネフローゼ症候群など脂質異常症に伴う腎疾患に有効です。

尿蛋白の濃度を下げたり、慢性腎炎の進行を緩やかにする作用もあります。

[ビタミンA(β-カロテンなど)の多いもの]

免疫力をアップし、腎炎に有効です。

シソ、モロヘイヤ、ニンジン、春菊、ほうれん草、カボチャ、小松菜、アシタバ、チンゲン菜、大根葉、ニラ、ミツバなど緑黄色野菜に多く含まれています。

[ビタミンB群の多いもの]

水溶性ビタミンで、それぞれ協力し合ってエネルギーの供給や代謝を助けます。

1つでも不足すると、他も連鎖的に働きを止めてしまうので、全体を毎日バランスよく摂ることが大切です。

海苔やマイタケ(乾)、豆類に全般的に多く、ビタミンB6はニンニク、ほうれん草、ショウガなどに多く含まれます。

[ビタミンCの多いもの]

風邪などのウイルスが腎臓に侵入するのを防ぐ働きがあるので、腎炎の予防に有効です。

ピーマン(特に赤・黄ピーマン)、芽キャベツ、ほうれん草、ブロッコリー、京菜、カブの葉、カリフラワー、ニガウリ、サヤエンドウなどが多く含んでいます。

一般にビタミンCは調理によって失われやすいが、ピーマンやジャガイモは加熱による損失が少なく、ピーマンは3個、ジャガイモは2個で、一日に必要なビタミンCが摂れる優秀な食材です。

[セレンの多いもの]

ミネラルの一種で解毒作用を助けます。

野菜ではネギに多く含まれているが、摂り過ぎると嘔吐、脱毛、爪の変形などの中毒症状が現れます。

[亜鉛の多いもの]

解毒作用を促してくれます。

免疫力を維持して風邪などの感染症にかかりにくくするので、腎炎の予防にもつながります。

マイタケ(乾)やそら豆・枝豆・グリーンピースなどの豆類、筍、シソ、ブロッコリーなどに多く含まれています。

[カリウムの多いもの(注意!尿の少ない場合を除く)]

利尿作用により尿の濃度を薄めて、腎臓の負担を軽減します。

パセリ、ほうれん草・三つ葉・からし菜・小松菜・京菜・春菊などの青菜類、アシタバ、ニンニク、モロヘイヤ、ニラ、ニンジン、シシトウ、セロリ、レンコン、なす、里芋、山の芋(山芋)、サツマイモ、インゲン豆、枝豆、大豆のほか、干しシイタケを筆頭にキノコ類、昆布やひじきなどの海藻にも多く含まれています。

腎不全(腎機能低下)により尿量が減り、カリウムの排泄量が減少すると血中カリウムが高くなるので、食品からのカリウム摂取を制限する必要があります。

その場合は、生野菜ではなく、煮汁にカリウムが溶出する温野菜にして食べるようにしましょう。

カリウムは、ストレスや慢性的な下痢、利尿剤の長期使用や塩分の過剰摂取などによっても減少します。

[カルシウムの多いもの]

腎不全では血中カルシウムが低下してくるので、カルシウムの摂取量を多く保つ必要があります。

ひじき、昆布などの海藻類やキクラゲのほか、小松菜、モロヘイヤ、大根菜、カブの葉、京菜、ツマミ菜、広島菜、からし菜、野沢菜、春菊、チンゲン菜など青菜・緑黄色野菜に多く含まれています。

[その他]

ゴボウに多く含まれる水溶性食物繊維のイヌリンは、腎機能を高め、利尿効果があるといわれています。

≪効果的な食べ方≫

ビタミンやミネラルは、体の抵抗力を高め、免疫力を強化する作用が確認されています。

野菜やイモ類、海藻類、キノコ類などに多く含まれているので、肉食に偏りがちな人はサラダや煮物などの付け合わせに取り入れるようにしましょう。

水分やカリウムが制限されている場合を除き、夏場にはスイカを積極的に食べるとよいです。

スイカには腎臓の細胞を修復するシトルリン(アミノ酸の一種)やカリウムが含まれていますので。

≪オススメ食材≫

ここまで、さまざまな食材が出てきて混乱してしまうかと思いますので、あいうえお順でよりオススメの食材を羅列しておきますので、参考までに!

・カボチャ

・春菊

・大豆

・ニラ

・にんじん

・ニンニク

・ブロッコリー

・ほうれん草

・マイタケ

・ミツバ

・モロヘイヤ

・山芋

≪ヘルスメガネマン的オススメ食材≫

ここで、僕がこれまでの内容から独断と偏見で、オススメの食材を厳選してみましたので、気が向いた方がいましたら、参考にしてみてください。

第1位:青背魚などの魚

第2位:ひじきや昆布などの海藻類

第3位:キノコ類

ここで、僕もよく食べている1品を紹介します。

「ブリと舞茸のさっぱり煮」です。

大根をすりおろします。

ブリは食べやすい大きさに切り、片栗粉をまぶします。

油で焼き色がつくまで焼きます。

醤油・みりん・酒・水・和風だしで煮汁を作ります。

舞茸を入れてしんなりするまで煮ます。

ブリと大根おろしを入れて煮ます。

器に盛りつけ、最後に細ネギをのせたら完成です。

興味のある方は是非御堪能あれ。

【まとめ】

・腎炎とネフローゼ症候群では、安静と食事療法が治療のポイント

・改善のためのポイント

➀塩分を控える

➁タンパク質を制限する

➂カロリーは確保する

➃水分を制限する

➄カリウムに注意する

・腎疾患全般に有効な成分の代表は、EPA(エイコサペンタエン酸)

・急性腎炎における感染症予防のポイントは、タンパク質・糖質・脂質の三大栄養素に加え、ビタミン、ミネラルがバランスよく含まれた食事をしっかりとること

・水分やカリウムが制限されている場合を除き、夏場にはスイカを積極的に食べるとよい

;スイカには腎臓の細胞を修復するシトルリンやカリウムが含まれているため

【クイズ】

Q1:腎機能の悪化は心臓にも悪影響を及ぼす。〇か×か。

Q2:魚は腎臓に対する「酸負荷」が強いので一切避けるのがよい。〇か×か。

Q3:リンの供給源として、最も悪影響を及ぼすものは以下のうちはどれか。

 ①動物性食品 ②植物性食品 ③食品添加物

回答

Q1の正解:〇

 腎臓病を有する人の死因の中で心血管疾患が断トツに多かったとの研究結果があります

 臓器はそれぞれ相互に影響し合っているのですね

Q2の正解:×

 そこまで極端にならなくても良いと考えます

 腎疾患全般に有効な成分の代表は、EPA(エイコサペンタエン酸)です

また、魚に豊富なビタミンDは慢性腎臓病の予防・改善に効果があると

 なにごともバランスが大事ということです

Q3の正解:③

 食品添加物のリン酸塩になります

植物性食品のリンが血液中に吸収されるのは50%以下、動物性食品のリンでは約75%ですが、食品添加物のリン酸はほぼ100%血液中に吸収されてしまいます

今回は、『腎炎の改善が期待できる食材』に関して簡単にまとめてみました。

次回は、『尿路結石』に対する食事法を簡単にまとめていこうかと思います。

『健康情報を手に入れて、今日も健やかに楽しく過ごしていきましょ~。ではまた。』

【参考文献】

『食べる投資 ハーバードが教える世界最高の食事術』満尾 正著

『食欲人』デイヴィッド・ローベンハイマー著

     スティーヴン・J・シンプソン著

『食事のせいで、死なないために』マイケル・グレガー/ジーン・ストーン著

『人生が変わる 神レシピ』メンタリストDaiGo/つっしー著

『一生リバウンドしないパレオダイエットの教科書』鈴木 祐著

『EAT-最高の脳と身体をつくる食事の技術』ショーン・スティーブンソン著

『死ぬまで若々しく健康に生きる老けない食事』スティーブン・R・ガンドリー著

『世界のエグゼクティブを変えた超一流の食事術』アイザック・H・ジョーンズ著

『細胞が生き返る 奇跡の「脂」食革命』ジョセフ・マーコーラ著

『DNA再起動 人生を変える最高の食事法』シャロン・モアレム著

『この病気にはこの野菜』斎藤 嘉美監修

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